勝尾城

勝尾城（かつのおじょう）

佐賀県鳥栖市河内町に位置する勝尾城は、標高501.3mの城山山頂に築かれた山城です。城跡は、本城である勝尾城を中心に、鬼ヶ城、高取城、葛籠城、鏡城などの支城群、そして当主の居館跡、家臣団屋敷跡、寺社跡、町屋跡などで構成されており、その広大な範囲は「勝尾城筑紫氏遺跡」として国の史跡に指定されています。

歴史

勝尾城の築城については、『肥前国史』では応永30年（1423年）に渋川義俊によって築かれたとされていますが、『歴代鎮西要略』では延徳3年（1491年）に渋川義基が築いたとされています。いずれにしても、この地が九州の南北・東西の交通の要衝であったことから、長く渋川氏と少弐氏の間で争奪戦が繰り広げられました。その後、少弐氏は大内氏の傘下に入り、その助力を得て勢力を拡大。永正18年（1521年）には、少弐氏の一族である筑紫満門が城主となりました。

天正14年（1586年）、九州を席巻した島津氏が筑前国への侵攻を開始すると、勝尾城は島津軍の格好の標的となりました。筑紫氏は当初島津氏と連携していましたが、島津氏の侵攻直前に大友氏に降伏したため、勝尾城は島津氏の攻撃を受けることになりました。同年7月6日には麓の総構えが破られ、7月11日には落城。城主の筑紫広門は降伏し、一時的に筑後の大善寺に幽閉されましたが、同年8月に挙兵し、勝尾城を奪還しました。しかし、戦後、豊臣秀吉によって筑後国上妻郡に18,000石の所領を与えられたため、勝尾城は廃城となりました。

発掘調査と史跡指定

平成元年（1988年）度の鳥栖市教育委員会の圃場整備事業に伴う発掘調査により、戦国時代の町屋跡が発見されました。その後、平成7年度（1995年）から16年度にかけて遺跡確認調査が実施され、勝尾城や周辺の支城、城主の館跡、寺社跡、空堀、石垣などが当時のままの状態で残存していることが判明しました。これらの調査結果を踏まえ、平成18年（2006年）に「勝尾城筑紫氏遺跡」として国の史跡に指定されました。

城の構造

勝尾城は、山頂部を主郭とし、城域全体に石垣が構築されています。特に、東側の伝・二の丸跡には、小規模な石材を積み上げた登り石垣と内枡形の虎口が見られます。また、安良川とその支流である四阿屋川の谷を利用し、谷戸部には家臣団屋敷や寺社、町屋などの城下町が造られ、長大な空堀と土塁で区画されていました。周囲の山には城や砦を築き、その稜線を防衛ラインとするなど、一乗谷朝倉氏遺跡と同様の構造が見られます。この点も史跡指定にあたり重要視されました。

発掘調査では、輸入陶磁器、国内産陶器、瓦器、土師器、瓦、中国銭などの遺物が多数出土しており、当時の生活様式や交易の実態を物語っています。

近隣には、筑紫晴門や川上左京の墓所があります。

まとめ

勝尾城は、戦国時代の山城の構造をよく残しており、その歴史的・学術的な価値は非常に高いと言えます。発掘調査によって当時の様子が明らかになりつつあり、今後もさらなる研究が期待されます。

参考文献
角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典（43.熊本県）』、角川書店、1987年
鳥栖市教育委員会発行 史跡勝尾城筑紫氏遺跡保存管理計画書

関連項目
* 日本の城一覧

もう一度検索