勝屋興久

勝屋興久（かつや おきひさ）／勝屋 重貞（かつや しげさだ）

勝屋興久（または勝屋重貞）は、戦国時代の武将であり、大内氏の重臣であった陶晴賢の家臣として知られています。彼は周防国都濃郡須々万（現在の山口県下松市須々万）を本拠地とし、殿ヶ浴山城を拠点とする国人領主でした。

名前について

一般的には「勝屋興久」の名で知られています。明治時代に編纂された『大内氏実録』にも「興久」として記録されています。しかし、陶晴賢の家臣に与えられる偏諱としては「興」よりも「房」の字が相応しいという考証も存在します。

一方、興久の子孫が代々住職を務める浄蓮寺（山口県下松市美里町）の寺伝では、「勝屋重貞」として伝えられています。

生涯

勝屋氏は周防国都濃郡須々万を拠点とする国人領主であり、興久は陶晴賢の配下として活動しました。

弘治元年（1555年）から始まった毛利氏による防長経略において、興久は須々万沼城に江良賢宣、山崎興盛・隆次父子、宮川伊豆守らと共に籠城しました。須々万周辺の在地領主たちは、自らの居城ではなく須々万沼城に集結し、地の利を生かして毛利軍に抗戦しました。

弘治2年（1556年）4月21日（または11月27日）、毛利氏家臣の坂元祐が兵を率いて須々万沼城の偵察に訪れた際、興久は出撃し、須々万沼城から1里離れた白砂川で坂元祐の軍と交戦しました。一時は坂元軍を撃退しましたが、興久自身は坂元祐と槍を合わせた際に坂氏配下の松原氏信の矢を受け、坂元祐によって討ち取られました。

興久の墓は、彼が戦死した白砂川の蛇床山の北側中腹に存在したとされ、小石を積んだ上に自然石を立てたものでした。明治時代に編纂された『都濃郡須々万村誌』には、同地に興久の墓とされる五輪塔の破片があると記録されています。

子孫

興久が須々万沼城での戦いで戦死した後、幼少だった子の重治（左門）は家臣に連れられて周防国都濃郡末武村に落ち延びました。成長後、重治は父や家臣たちの菩提を弔うために出家し、「蓮甫」と名を改めました。慶長年間に一宇を建立し、慶長15年（1610年）に寺号を許され、「浄蓮寺」と称しました。重治（蓮甫）は慶長18年（1613年）に死去し、子の宗甫が二世住職として後を継ぎました。以来、浄蓮寺は代々勝屋氏の子孫が住職を務め、明治時代に名字を村名から「末武」に改めています。

逸話

系譜によると興久は相良武任の弟とされていますが、近藤清石は相良武任に兄弟がいないことから、この説を誤りとしています。また、もし興久が相良武任の弟であれば、陶晴賢によって討たれていたはずだと述べています。

明治時代に成立した『酔古帖』には、興久の旗指物が福田半僢によって所蔵されていたことが記録されています。その旗指物は革製で上り藤紋が描かれていました。

興久は須々万の藤谷にあった藤を愛しており、藤を家紋としたという伝承があります。また、「藤谷」の地名もその藤に由来するとされていますが、近藤清石はこの伝承を付会としています。

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