相良武任

相良武任：文武に秀でた大内氏家臣の生涯

相良武任（さがら たけとう）は、戦国時代の武将であり、大内氏の家臣として知られています。彼の生涯は、大内氏の家中で文治派と武断派の対立に巻き込まれ、最終的に悲劇的な結末を迎えることとなりました。

生い立ちと大内氏への仕官

明応7年（1498年）、相良正任の子として生まれた武任。相良氏は藤原南家の一族であり、肥後の国人・相良氏の一門とされています。父・正任は文人としても優れており、『正任記』を著しています。武任は大内義隆の右筆・奉行人として仕え、その行政手腕を発揮しました。国人の統制、守護代の権力抑制、そして大名権力の強化に尽力し、義隆からの信頼を得て、天文6年（1537年）には従五位下・中務大丞に叙任され、評定衆にも列せられました。

相良宗家との関係

武任は肥後の相良宗家とも関係を持っていました。相良義滋が将軍・足利義晴から偏諱と官職を得る際には、仲介役である大内義隆の命を受け、実際の工作を担当しました。勅使である小槻伊治と共に肥後国へ下向したことからも、その貢献が窺えます。

武断派との対立と失脚、そして再出仕

天文10年（1541年）の吉田郡山城の戦い後、陶隆房（後の陶晴賢）が出雲国への遠征を主張した際、武任は反対しました。彼は安芸国と石見国の征服が完了していない状況での敵地深くへの侵入は危険であると主張し、尼子軍と同様の事態に陥る可能性を指摘しました。しかし、義隆は隆房の提言を受け入れ出雲遠征（月山富田城の戦い）は失敗に終わりました。この失敗後、義隆の信任を得た武任ら文治派が台頭し、陶隆房・内藤興盛ら武断派との対立が激化します。天文14年（1545年）には隆房らの巻き返しを受け失脚し、肥後国の相良晴広の下で隠棲生活を送りますが、天文17年（1548年）に義隆の要請を受け再出仕を果たしました。

再びの出奔と最期

再出仕後も、武任と隆房の対立は解消されませんでした。天文19年（1550年）には暗殺を企てられるまでになりますが、事前に察知した武任は義隆に密告し難を逃れます。その後、隆房との融和策として、自分の娘を隆房の嫡男である陶長房に嫁がせようと試みますが、これも失敗に終わります。同年9月16日、武任は大内家から再度出奔します。天文20年（1551年）1月には筑前国で筑前守護代・杉興運によって抑留され周防に戻されます。「相良武任申状」で義隆に対して弁明しますが、その中で「隆房・興盛らに謀反の企てあり」と告げ口をしたばかりか、杉重矩のことまで讒訴したため、武断派との仲は完全に決裂し、8月10日に再び大内家を去ります。そして、8月20日に陶隆房が謀反を起こすと、武任は杉興運と共に筑前花尾城において隆房に抵抗しますが、隆房の命を受けた野上房忠によって城を攻め落とされ自害しました。享年54。武任の首は山口に送られ、梟首されました。

辞世の歌は

空蝉の　つくしよしとは　思はねど　身はもぬけつつ　なくなくぞ行く

人物評

武任については、肯定的な評価と否定的な評価が存在します。『大内義隆記』では「老臣らを讒訴する奸臣」と評されており、大寧寺の変を振り返った大友氏重臣の戸次鑑連（後の立花道雪）は、「思慮を欠いた義隆が、道理を説いている陶隆房より、無道を企てた相良武任を贔屓した」と批判しています。

関連作品

* 『毛利元就』（1997年、NHK大河ドラマ、演：白井晃）


このように、相良武任は優れた行政手腕を持つ一方で、政争に巻き込まれ、悲劇的な最期を遂げた人物として、歴史に名を残しています。

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