江良賢宣

江良賢宣：陶氏から毛利氏へ、戦国を生き抜いた武将

江良賢宣（えら かたのぶ）は、戦国時代の武将です。初めは大内氏の重臣である陶氏に仕え、後に毛利氏の家臣となりました。弟には同じく陶晴賢の重臣であった江良房栄がいます。諱の「賢」の字は、主君である陶晴賢からの一字拝領と考えられています。

生涯

陶氏家臣時代

江良氏は大内氏の重臣・陶氏の家臣として生まれました。賢宣は周防国（現在の山口県）の都濃郡鹿野と佐波郡徳地を領し、鹿野の撒骨山砦を本拠地としていました。居住地は、初めは周防国都濃郡大泉・金松に居住し、その後下市に移り、応永15年（1408年）に開山された龍雲寺を屋敷として使用していました。

天文22年（1553年）、陶晴賢の命により安芸桜尾城の城番となり、毛利與三（後の奈古屋元堯）らと共に防備を固めましたが、翌天文23年（1554年）に毛利軍の熊谷信直の開城勧告を受け入れ、桜尾城を開城し、周防国へ撤退しました。

弘治元年（1555年）から始まった毛利氏による防長経略の際には、周防国都濃郡須々万の須々万沼城への援軍として派遣され、城督として城主の山崎興盛・隆次父子らと共に籠城しました。この時、賢宣や山崎興盛・隆次父子のように須々万やその近隣に居城を持つ在地領主が多く、地の利を生かして須々万沼城に集まり毛利軍に抗戦しました。

弘治2年（1556年）には山口から援軍も到着し、毛利隆元や小早川隆景が率いる毛利軍に対して頑強に抵抗しましたが、小早川隆景らの調略を受けた賢宣らは、弘治3年（1557年）に毛利氏に降伏し、須々万沼城を開城しました。最後まで抵抗を試みた城主の山崎興盛・隆次父子は、賢宣らの降伏により抵抗が不可能と判断し降伏、毛利元就による助命を断り自害しました。

毛利氏家臣時代

弘治3年（1557年）に毛利氏に服属した賢宣は、自領である周防国都濃郡鹿野や佐波郡徳地も毛利氏に服属させました。毛利軍は陶氏の本拠地である若山城を落城させました。その後、賢宣は毛利軍の先兵として山口に攻め入り、高嶺城と姫山城を陥落させています。

同年12月には対石見小笠原氏の前線である石見井原城に派遣され、毛利氏家臣である井原元造の補佐役を務めました。

毛利隆元が小早川隆景に宛てた書状によると、賢宣は同族の江良神六と不仲であり、隆景が賢宣に肩入れしたことで、江良神六を引き立てようとする赤川元保と隆景の関係が悪化していました。毛利隆元は賢宣と神六の毛利氏に対する貢献度について、賢宣を高く評価する一方で、心掛けが悪く功を挙げていない江良神六を支持する赤川元保を非難しています。

毛利氏に服属してからは毛利氏の直臣として活躍し、永禄年間に陶氏の旧臣たちが石山本願寺と交渉しようとした際も、江良氏は署名しておらず、毛利氏家臣としての地位を確立し旧主家の再興運動とは決別していたと考えられています。

また、後の天正11年（1583年）の時点で江良氏は一所衆を預けられる寄親となっていましたが、毛利氏における寄親は譜代家臣が多く、大内氏旧臣では内藤氏などの例がある程度でした。このことは、大内氏の時代には江良氏の主家である陶氏と同格に近かった内藤氏と同じ立場に江良氏がなっていることを示しており、賢宣が毛利氏に服属して以降、毛利氏の直臣として一定の地位を築いていた証左とされています。

立花山城の戦い

永禄11年（1568年）頃、桂元親らと共に防衛のために赤間関に派遣され、翌永禄12年（1569年）には九州北部に出陣しました。

永禄12年（1569年）10月、大内輝弘の乱が勃発すると、毛利元就の指示を受けた吉川元春と小早川隆景は、立花山城を守る乃美宗勝らを残し、毛利軍主力を率いて大内輝弘討伐のため立花山城から撤退しました。

立花山城に残った毛利軍は約1ヶ月余り大友軍による攻撃に耐え、大内輝弘とその与党が掃討されるのを見届けると、開城しました。この時の立花山城での籠城戦に賢宣も加わっていましたが、討ち死にしています。

賢宣の討死によって、子の愛童（後の江良藤兵衛尉）が家督を相続し、同年12月11日に賢宣の忠節を賞賛した毛利輝元から金覆輪の太刀と銭を与えられました。

賢宣の墓は、本拠地であった撒骨山砦の麓にあり、山口県周南市には江良賢宣と山崎興盛の墓と伝えられる墓があります。

逸話

山口県周南市須々万には、賢宣が防戦したことを由来とする「江良田」という地名が存在します。

江良賢宣は、激動の戦国時代を陶氏、そして毛利氏の家臣として生き抜き、その武勇と忠義をもって名を残した武将でした。

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