勝山 (遊女)

勝山（かつやま）について

勝山は、江戸時代初期、特に承応・明暦年間（17世紀中頃）に吉原で活躍した有名な遊女の名前です。彼女はもともと、江戸の神田にあった「丹前風呂」という、私娼窟を兼ねた風呂屋の湯女でした。しかし、その独特なファッションセンスと魅力的な容姿が評判を呼び、1653年に山本芳順という人物に抱えられ、吉原の太夫となります。

勝山の人物像と来歴

勝山は、湯女時代からその派手な出で立ちで注目を集めていました。彼女は、自身で考案した上品な武家風の「勝山髷（かつやままげ）」という髪型を結い、腰には木刀の大小を挿し、派手な縞模様の綿入れを羽織って街を歩き回っていました。その姿は当時の江戸の若い女性たちの間で大流行し、こぞって彼女のファッションを真似たと言われています。

勝山の容姿や武家風の好みから、彼女は零落した武家の娘ではないかという説もありますが、湯女になる前の経歴は明らかではありません。当時、丹前風呂のような私娼窟は違法であり、幕府は吉原からの要請を受けて、湯女や飯盛女などの取り締まりを強化していました。勝山も、警動（私娼窟の一斉捜査）によって逮捕され、そのまま吉原に身柄を引き渡され、遊女となりました。

しかし、彼女はもともと人気が高かったため、吉原では最高位の太夫にまで上り詰めました。多くの大名や豪商が彼女の贔屓客となり、吉原に登楼するにつれて、彼女の名は諸藩にまで知れ渡るようになりました。井原西鶴の『西鶴織留』にも、一代の名妓として紹介されており、彼女の人気ぶりをうかがい知ることができます。

勝山風・丹前風

勝山は、湯女時代に旗本奴という武家の使用人たちから人気を集めていました。そのため、彼女の好みは男性的で武家風のものが多かったようです。彼女が考案した「勝山髷」は、上品な印象から武家の奥方たちの間でも好んで結われるようになり、当時の識者を嘆かせたと言われています。

また、彼女が考案したとされる広袖の綿入れ「丹前」も、彼女の贔屓客である旗本奴や侠客たちの間で流行しました。丹前風呂は、堀丹後守の屋敷前にあったことから、血気盛んな若者が多く集まる場所でした。そのため、彼らのような江戸初期の若者の派手な好みを「丹前風」と呼ぶこともあります。

勝山が考案・愛用したとされる品々

勝山髷：大きな輪になった華やかな武家風の髷。
勝山草履：鼻緒が朱色の二本草履。
丹前：派手な縞柄の広袖の綿入れ。袖口などが別布で覆われている。

また、吉原の「花魁道中」で用いられる「外八文字」の足運びは、勝山の考案であるという説もあります。それまでは、京都の島原の太夫道中に倣って「内八文字」の道中が行われていたと言われています。

脚注

勝山のファッションは、当時の人々に大きな影響を与え、彼女の名は後世にまで語り継がれています。

関連項目

吉原
遊女
花魁
丹前風呂
* 勝山髷

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