勝本港

勝本港について

勝本港は、長崎県壱岐市の北端、勝本町に位置する地方港湾です。長崎県が港湾管理者となっています。この港は、正村湾を中心に広がっており、湾口には辰ノ島、若宮島、名鳥島の三つの島が点在しています。これらの島々が天然の防波堤となり、穏やかな海域を形成しているため、古くから良港として知られています。

歴史

勝本港は、江戸時代には朝鮮通信使の寄港地として重要な役割を果たしました。1607年から1811年までの約200年間、往路11回、復路8回、朝鮮通信使の船がこの港に寄港しました。当時の正村湾は水深が浅く、大型船が直接接岸できなかったため、通信使たちは和船に乗り換えて上陸しました。

1680年には、松浦藩が沿岸警備のために、警察署、裁判所、役場の機能を兼ね備えた押役所を港に設置しました。また、若宮島には遠見番所が置かれ、武士が配備されるなど、国防上の要衝としての役割も担っていました。1777年には南京船が入港し、1849年以降は異国船が頻繁に現れるようになり、港は一時騒然とした状況となりました。

近代に入ると、1894年に深川汽船の「若津丸」が博多-勝本航路に就航し、初めて汽船が港に入港しましたが、欠航が多かったため、航路が安定したのは1923年に対馬商船（後の九州郵船）の「睦丸」が就航した後でした。当時はまだ接岸施設が整備されておらず、はしけを使って乗客や貨物を中継していました。

本格的な港湾整備は、1933年の鵜ノ瀬防波堤の建設から始まりました。1936年には岸壁の建設が計画されましたが、資金不足や太平洋戦争の影響で、完成は戦後の1949年にずれ込みました。その後、1964年の海岸通りの完成を皮切りに、防波堤の整備、港内の浚渫、中央突堤の建設、外港の建設などが順次進められ、現在の港湾施設が整備されました。

かつては九州郵船の博多-壱岐・対馬航路も寄港していましたが、船舶の大型化に伴い、大型船に対応できない勝本港への寄港は1975年ごろに中止されました。

現在の状況

2015年度の統計では、勝本港の発着数は27,698隻、総トン数は293,169トン、利用客数は32,742人でした。現在、勝本港は、勝本町漁業協同組合が運営する辰ノ島への渡船や遊覧船が発着する港として利用されています。

航路

勝本町漁業協同組合は、海水浴場がある辰ノ島への渡船と、島周辺を巡る遊覧船を運航しています。これらの船は3月から10月までの季節限定で運航され、特に夏期（7月・8月）の辰ノ島渡船は30分間隔で運航されるため、観光客にも多く利用されています。

まとめ

勝本港は、その歴史的な背景と天然の地形に恵まれた港湾です。江戸時代には朝鮮通信使の寄港地として、また、近代には地域の海上交通を支える港として重要な役割を果たしてきました。現在では、観光客向けの航路が整備されており、多くの人々が訪れる場所となっています。

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