勝道

勝道上人：日光山を開いた僧侶の生涯

勝道上人（しょうどうしょうにん）は、奈良時代から平安時代初期にかけて活躍した僧侶です。735年（天平7年）、現在の栃木県真岡市付近に生まれ、817年（弘仁8年）に没しました。俗名は若田氏藤糸丸。下野介若田高藤と豪族吉田連氏出身の明寿の子として誕生しました。幼少期より山林で修行を行い、やがて下野薬師寺の如意僧都に師事して仏門に入りました。

修行と日光山開山

勝道上人は、765年（天平神護元年）に出流山満願寺を開創しました。その後、日光山への入山を試み、782年（延暦元年）に三度目の挑戦でついに山頂に到達します。山頂では37日間、精進潔斎し、日光山の神霊を礼拝しました。この功績により、日光山は聖地として広く知られるようになりました。

784年（延暦3年）、勝道上人は再び日光山に登り、弟子たちと共に中禅寺湖付近を巡り、神宮寺を建立、中禅寺を開きました。また、四本龍寺（現在の輪王寺）や二荒山神社の創建にも関わったという伝承も残されていますが、史実の確認は困難です。

関東での布教活動

日光山での修行を終えた後、勝道上人は山を下り、布教活動に励みました。795年（延暦14年）以降は上野国講師に任じられ、上野国分寺に滞在、赤城山開山の伝承も残されています。また、栃木県栃木市都賀町木には、勝道上人が建立したとされる華厳寺の史跡が残っています。

807年（大同2年）の旱魃の際には、日光山で祈雨の修法を行い、その功績により伝灯法師位を授かりました。空海は勝道上人の依頼により「勝道碑文」を814年（弘仁5年）に作成しており、これは勝道上人の事績を知る上で重要な史料となっています。816年（弘仁7年）には、日光山山頂に三社権現の社を建立しました。

没後と研究

817年（弘仁8年）、勝道上人は四本龍寺の北にある岩窟で83歳で亡くなりました。勝道上人の著作は現存していませんが、空海の「勝道碑文」をはじめ、『中禅寺私記』『補陀洛山建立修行日記』『日光山滝尾建立草創日記』などの史料や、山頂遺跡の発掘調査などから、その生涯と業績が徐々に明らかになりつつあります。

勝道上人の研究は、史料を史実として高く評価するもの、史料を疑問視し私度僧とするもの、日光山開山の背景に蝦夷問題の終結があったとするものなど、多様な視点が存在します。しかし、山頂遺跡の出土品からは、勝道上人が当時有力な支持者を得ていたことが示唆されています。

勝道上人は、日光山開山という大きな功績を残しただけでなく、関東地方における仏教の普及にも大きく貢献した人物と言えるでしょう。その生涯は、信仰と自然との調和、そして人々の幸福を願う強い意志を示すものでした。史料の不足など、不明な点も残されていますが、勝道上人の功績は、今も日光の地で語り継がれ、人々の心に深く刻まれています。

もう一度検索