勿吉

勿吉について

勿吉（もっきつ、拼音：Wùjí）は、中国の南北朝時代に存在した狩猟民族で、満洲地域に住んでいました。彼らの居住地は現在の松花江から白頭山周辺と考えられ、粛慎や挹婁の末裔とされています。また、彼らは後の靺鞨の前身とも言われています。

名称の由来

「勿吉」という名称は、何らかの音を移したものと考えられていますが、その正確な言葉の音は不明です。フランスのシャヴァンヌは、古代の民族名「Mukri」を「勿吉」に結びつけ、彼らの勇猛さを記述した文献の記録と絡めています。また、中国の高凱軍は、勿吉は粛慎に対する他民族の呼称で、自称ではないとしています。

歴史的背景

勿吉は、5世紀ごろには松花江下流から黒竜江下流、さらには沿海州にかけて強大な勢力を誇っていました。彼らは中華王朝に朝貢を行っていましたが、6世紀半ばに滅び、その後の子孫は靺鞨（まっかつ）と呼ばれるようになりました。この「勿吉」と「靺鞨」は、同じ音を基にした名称であると今日では考えられています。

南北朝時代における活動

北魏の延興年間（471年 - 476年）、勿吉の遣使が北魏に貢献を行い、特に馬の提供が多く見られました。太和（477年 - 499年）の初めにも再度馬を貢納し、また様々な方物を贈っていました。これらの活動は、その後も続き、東魏にまで記録が残されています。

隋代の交流

隋の開皇年間の初頭、勿吉は再び隋に貢献を行いました。煬帝による高句麗遠征の際には、勿吉の渠帥が隋に降伏し、戦功によって高い地位を得ることになりました。彼らは周辺国との軍事的交流や戦争にも積極的に関与し、494年には夫余を滅ぼすまでの力を持ち続けていました。

風俗と文化

勿吉の子孫である靺鞨の7部族は、広大な地域に分布し、異なる生業や文化を持っていました。南部では農業を行う部族があり、北部では狩猟中心の生活を送る部族が存在しました。また、勿吉人の伝統的な衣服や食文化、居住スタイルは、興味深い特徴を持っています。彼らはイノシシや犬の皮を用いた服装をし、豚を飼育することが主な生活様式となっていました。

婚姻と埋葬

勿吉の婚姻慣習は独特で、初婚の夜には男が女の実家で手を握る儀式があり、この行為で婚約が成立します。埋葬についても独自の風習があり、春夏の間に亡くなった場合は遺体を埋め、秋冬に亡くなった場合は野に遺体を置くことがありました。

言語と系譜

勿吉の言語は、中国の史書に「独異」と記されており、他の民族とは異なる独特なものであったことが示されています。勿吉が後の女真族とされるツングース系であることが示唆されているほか、古シベリア系の言語である可能性もあると考えられています。

勿吉は、居住様式や文化が後の民族へと引き継がれ、多くの歴史的記録に名を残した重要な民族であると言えるでしょう。

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