一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研):歴史と不正、そして新たな歩み
一般財団法人化学及血清療法研究所(以下、化血研)は、
熊本県熊本市に本所を置く
一般財団法人です。かつては、国内有数の
ワクチン・血液製剤メーカーとして知られていました。通称は「化血研」。
A型肝炎[[ワクチン]]では国内シェア100%、B型肝炎
ワクチンでも約80%を占めるなど、日本の医療を支える重要な役割を担っていました。動物用
ワクチンの分野でも国内トップクラスのシェアを誇っていました。
華々しい歴史と暗転:不正製造の発覚
1945年の設立以来、化血研は日本の医療に貢献する数々の製品を世に送り出してきました。しかし、その輝かしい歴史に影を落とす出来事が起こります。
1974年頃から、ヒト用血漿製剤の製造において、承認された方法と異なる製造が行われていたことが判明したのです。この不正は長年にわたり続けられ、製造記録の改ざんといった隠蔽工作も行われていました。
2015年、
匿名の
内部告発をきっかけに、
厚生労働省による調査が行われ、不正が明るみに出ます。化血研が製造していた血液製剤全12製品で、31の工程に不正が見つかりました。動物用
ワクチンでも同様の不正が
1985年頃から行われていたことが判明しました。
この不正によって、化血研は
厚生労働省から業務停止命令を受け、日本製薬工業協会からも
除名されました。国内シェアの高い
ワクチンなどの出荷停止により、医療現場では深刻な
ワクチン不足が発生し、予防接種の停止を余儀なくされる事態となりました。
事業譲渡と新たなステージへ
不正発覚後、化血研は事業の存続を模索しますが、
2016年の熊本地震による被害も重なり、経営は深刻な状況に陥ります。
アステラス製薬との事業譲渡交渉は破談となり、最終的に
2018年7月、
明治ホールディングスや
熊本県内の企業が出資する
KMバイオロジクスに主要事業が譲渡されました。これにより、化血研は製薬事業から撤退し、研究機関への研究支援などの公益事業に専念することとなりました。
化血研の負の遺産:薬害エイズ事件
化血研は、
1990年代に発生した薬害
エイズ事件でも被告となりました。非加熱の血液凝固因子製剤の使用が原因で、多くのHIV感染者、
エイズ患者が出たこの事件は、日本の医療界に大きな衝撃を与えました。化血研は、この事件を通して、安全な医薬品を供給する責任の重さを痛感する事になったのです。
化血研の現在と未来
事業譲渡後、化血研は公益財団法人として生まれ変わり、医療技術者の育成支援や学術集会の開催、研究助成など、社会貢献活動に力を注いでいます。過去の過ちを教訓に、新たな道を歩み始めていると言えるでしょう。
まとめ
化血研の歴史は、日本の製薬産業における栄光と挫折を象徴するものです。長年にわたる不正製造という暗い影を背負いつつも、現在は公益事業に専念することで、社会への貢献を目指しています。その未来が、過去の過ちを乗り越えた明るいものとなることを期待したいです。