KMバイオロジクス

KMバイオロジクス株式会社：日本の医療を支えるバイオテクノロジー企業

KMバイオロジクス株式会社は、明治ホールディングスの連結子会社として、日本の医薬品製造業界において重要な役割を担う企業です。その歴史は、化学及血清療法研究所（化血研）の不正製造問題という困難な状況から始まりました。化血研は、長年にわたり日本のワクチン供給において中心的な存在でしたが、2015年に発覚した不正製造問題により、厚生労働省や農林水産省から業務停止命令や販売自粛命令を受けました。

化血研の製造する製品の中には、日本で同社のみが製造するか、国内シェアが最大で代替品が存在しない「シングルサプライ製品」が多くありました。A型肝炎ワクチンなど、多くのワクチンは化血研が国内シェアの多くを占めており、その供給停止は深刻な社会問題を引き起こしかねませんでした。この事態を受け、厚生労働大臣は事業譲渡を含む組織の見直しを強く求めました。

アステラス製薬との交渉が頓挫した後、2017年12月、明治ホールディングスが化血研の製薬事業と臨床検査事業の譲受を決定しました。明治グループは、Meiji Seikaファルマとの連携により感染症領域の事業強化を目指し、化血研の事業承継に乗り出したのです。2018年7月2日、明治グループ、熊本県、熊本県企業グループ（えがおホールディングス、学校法人君が淵学園、熊本放送、再春館製薬所、テレビ熊本、富田薬品、肥後銀行）が出資するKMバイオロジクス株式会社が設立され、化血研の事業が譲渡されました。

KMバイオロジクスの社名は、「熊本」と「明治グループ」を組み合わせた「KM」に由来し、バイオテクノロジー領域に特化したグローバル企業を目指すという意気込みが込められています。化血研から引き継いだ従業員と共に、ヒト用ワクチン、動物用ワクチン、血漿分画製剤の研究開発、製造、供給を主力事業として展開しています。

多くのシングルサプライ製品を引き継いでいるため、KMバイオロジクスは日本市場において重要な地位を占めています。具体的には、マムシやハブなどの蛇毒抗毒素、A型肝炎ワクチン、動物用の炭疽症ワクチン、各種診断薬など、他社では製造されていないか、供給が限られている製品を数多く取り扱っています。また、特定疾患治療薬であるオーファンドラッグを8商品保有しています。

新生児マススクリーニング検査も重要な事業の一つです。化血研時代から実施されてきた新生児マススクリーニング検査を引き継ぎ、熊本県、福岡県、佐賀県など複数の自治体から検査を受託しています。年間約7万人の新生児の検査を行い、地域社会の健康に貢献しています。

KMバイオロジクスは、熊本県に本社を置き、熊本県内を中心に複数の事業所を展開しています。本社・熊本事業所の他に、合志事業所、菊池研究所、阿蘇事業所、配送センター、そして東京営業所を構え、日本全国への製品供給体制を整えています。

KMバイオロジクスは、化血研の負の歴史を乗り越え、日本の医療に貢献する企業として発展を続けています。シングルサプライ製品の安定供給、新生児マススクリーニング検査の継続、そして新たな技術開発への挑戦など、その取り組みは日本の医療の未来を支える上で欠かせない存在となっています。将来は海外進出も視野に入れ、グローバルなバイオテクノロジー企業として更なる成長を目指していくことでしょう。

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