北京原人

北京原人とは

北京原人（ペキンげんじん、学名:Homo erectus pekinensis）は、中国の北京市房山県周口店竜骨山で見つかった化石人類です。ホモ・エレクトスという種の亜種に分類され、主に更新世中期に生息していたと考えられています。これまでの研究ではこの化石の年代は約50万年前とされてきましたが、最近の調査により68万～78万年前に遡る可能性が示されています。周口店の遺跡はユネスコの世界遺産にも登録されています。

研究の歴史

北京原人の発見は19世紀末に始まりました。北京では当時、骨や歯が医療用の「竜骨」として販売されており、その中に人類の歯と思われるものが含まれていました。義和団の乱の後、ドイツの軍医がそのような歯を見つけ、これがミュンヘンの大学教授に送られ、1902年に報告されました。

その後、1921年にはスウェーデンの地質学者ユハン・アンデショーンとオーストリアの古生物学者オットー・ズダンスキーが新たな歯の化石を発見しました。そして、1927年にはカナダの解剖学者ダヴィッドソン・ブラックによって新属新種として公式に報告されました。1929年には中国の考古学者裴文中がほぼ完璧な頭蓋骨を発見し、発掘が進むにつれて合計で十数人分の骨が見つかりました。

これらの化石は1940年にロックフェラー財団の支援を受けて北京協和医学院に保管されることになりましたが、日本とアメリカの関係が悪化する中でアメリカへの移送計画が立てられました。1941年12月に、アメリカ海兵隊によって護衛されながら港に搬送されましたが、その途中で真珠湾攻撃が発生し、計画は頓挫しました。その後、これらの化石は行方不明となり、様々な仮説が生まれました。

骨の行方と謎

1941年以降、北京原人の骨については「日本軍に押収されたが空襲で焼失した」「どこかに隠されている」「薬として利用された」といった多くの仮説が存在します。近年、中国政府は目撃情報に基づく捜索を継続しており、アメリカ軍による目撃証言や地元の病院での目撃が報告されています。1977年には日本軍に押収されて輸送中に沈没したという説をもとに調査が行われましたが、見つけることはできませんでした。

また、1970年代には、オーストラリアの実業家が懸賞金を出した結果、骨と思しき物がシドニー美術館に持ち込まれましたが、それが本物かどうかは確認されませんでした。こうした骨の行方は現在も多くの謎を残しています。

北京原人の生活

北京原人については、石器や火の跡が発見されており、これにより彼らが石器を使用し火を扱っていたことが示唆されています。また、周辺から動物の骨が見つかっており、彼らが狩猟を通じて食物を得ていたと考えられています。中には食人の風習があったという見解もありますが、後にこの説はハイエナによる食痕の可能性が指摘されたため、詳細な検討が必要です。

北京原人は現代人との大きな違いがあります。彼らは円らな頭部と傾斜のある額を持ち、後頭部の骨も突き出していました。この特徴から、彼らは古代の人類の進化の過程で特有の位置を占める原人とされました。現代人の祖先ではないとされ、何らかの理由で絶滅してしまったと考えられています。

結論

北京原人は人類の進化についての貴重な証拠を提供しており、その発見は人類の歴史を深く理解する手助けとなっています。その遺骨の行方が未だに謎に包まれていることは、研究の継続的な目的となるでしょう。

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