北大社信号場

北大社信号場は、三重県員弁郡東員町に位置する三岐鉄道北勢線の施設です。かつては同じ名前の北大社駅として旅客営業を行っていましたが、現在は駅としての機能は廃止され、構内にある車両基地（北大社車両管理区）へ出入りする列車の制御を行う信号場として運用されています。信号場として存続しているのは、この車両基地が併設されているためです。

この地の歴史は、1914年（大正3年）4月5日に北勢鉄道の北大社駅として開業したことに始まります。開業当初から北勢線の運行における中枢であり、広大な構内には車両基地が設けられていました。その後、経営母体は幾度となく変遷します。1934年には北勢電気鉄道、1944年には三重交通、1964年には三重電気鉄道、そして1965年からは近畿日本鉄道（近鉄）の駅となりました。近鉄時代の1977年には、車両基地の機能が西桑名からこの地に移転し、重要性が増しました。2003年には三岐鉄道に事業が譲渡されます。

三岐鉄道は経営合理化のため、当駅と六把野駅を統合し、東側に新しい東員駅を設置する方針を打ち出しました。これに伴い、2005年（平成17年）3月26日をもって、北大社駅は六把野駅とともに廃止され、旅客扱いは終了しました。しかし、車両基地への出入庫機能は維持する必要があったため、信号場として存続することになったのです。駅の廃止後も施設改良は行われ、2006年には構内の急曲線が改良され、信号設備も新しいタイプに変更されています。

北大社駅として営業していた頃は、北勢線で最大規模を誇る駅でした。駅員が常駐し、駅務員の宿泊施設も備わっていたほどです。特に重要な機能として、北勢線全体の列車運行を管理する運転指令所が設置されており、全線の信号制御を担っていました（この機能は後に東員駅に移設）。駅舎には自動券売機がありましたが、自動改札はありませんでした。

ホームは2面3線という大規模な構造を持っていました。北側の線路は阿下喜方面行き、中央は主に西桑名行き、南側は主に当駅折り返しや車両基地への出入庫列車が使用していました。駅の廃止後、2005年度にはホームおよび北側の線路は撤去されています。駅舎の西側には、信号場となった現在も使われている車両基地と変電所がありました。かつて駅舎や東側の駐輪場があった場所は、現在、空き地となっています。

駅として機能していた頃の利用状況は、朝夕は学生や通勤客が中心でしたが、日中の利用者は主に高齢者など少数でした。駅の近くには並行するバス路線があり、バスの方が速く本数も多かったため、そちらを利用する人が多かったことも影響しています。

周辺地域は北大社と大木（二軒屋）の境界にあたります。かつての駅前には現在も中日新聞の販売店や歯科医院、墓地などが存在します。

現在の北大社信号場は、三岐鉄道北勢線の東員駅と大泉駅の間に位置しています。かつては大泉駅との間に大泉東駅（2004年廃止）が存在し、さらに遡ると、その大泉東駅との間に大木駅（1944年廃止）も存在していました。

現在の信号場構造としては、本線にあたる1号線と、車両基地への出入りに使う2号線が設けられています。1号線からは桑名・阿下喜の両方向へ出発でき、また車両基地へ入庫することも可能です。一方、2号線からは桑名方面への出発と車両基地への入庫はできますが、阿下喜方面へ出発することはできません。これは、主に車両基地から桑名方面へ列車を出庫させる運用を想定した構造です。2005年度に行われた構内の曲線改良により、運行の安全性が向上しています。

北大社信号場は、駅としての役割を終えましたが、車両基地への重要なアクセスポイントとして、今も北勢線の運行を支えています。

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