北小路俊昌

北小路俊昌：公家から官僚へ、そして男爵の生涯

北小路俊昌は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて活躍した、稀代の公家にして官僚です。大江氏を本姓とする彼は、北小路家という名門の家系に生まれました。幼少期は北小路俊文の子として育ち、後に北小路俊常の養子となり、北小路家の家督を継承することになります。

彼の経歴は華麗なものでした。孝明天皇の皇子であった祐宮（後の明治天皇）の蔵人となり、中務大丞に任ぜられるなど、朝廷での地位を着実に築き上げていきます。明治天皇の即位後には堂上家に列し、昇殿を許される栄誉に浴しました。

しかし、北小路俊昌のキャリアは、順風満帆とは言い難い一面も持ち合わせています。明治維新後、伊那県知事に就任した彼は、深刻な経済問題に直面することになります。当時、伊那県内では贋金が流通しており、その回収に奔走したのです。この問題解決のため、彼は豪農商に商社を設立させ、独自の紙幣である商社札の発行を許可しました。しかし、政府が私製紙幣の製造停止を命じたことで、やむなくオランダ商人からの借入に頼る事態となり、「伊那県商社事件」と呼ばれる経済問題を引き起こしてしまいました。この責任を取らされ、明治2年（1870年）に伊那県知事を罷免されます。

失意の時期を過ごしたのち、明治11年（1878年）には宮内省において維新前諸儀式の調査を命じられるなど、政府への貢献を続けます。そして、明治17年（1884年）には男爵に叙爵されるという栄誉に浴しました。しかし、その喜びも束の間、同年中に彼はこの世を去ります。

北小路俊昌の家族についても触れておきましょう。彼の父は北小路俊文、養父は北小路俊威です。妻や母については記録が乏しく、詳細は不明です。しかし、彼には北小路俊岳、友麿、敷麿という実子と、北小路俊茂という養子がいました。息子の俊岳は、明治32年（1899年）に藤原采女亮石碑に参碑していることが知られています。

北小路俊昌は、『北小路俊昌手記』という著作を残しています。これは、彼の生涯や経験、そして当時の社会情勢を知る上で貴重な資料となるでしょう。

北小路俊昌の生涯は、激動の時代を生きた一人の公家・官僚の物語です。華麗な経歴の裏側には、責任を負わされた苦悩や、時代を生き抜くための葛藤があったことでしょう。彼の残した記録や、後世に残された証言から、その波瀾万丈な人生を垣間見ることができます。彼の人生は、明治維新という大きな転換期を経験した日本の歴史を理解する上で、重要な手がかりを与えてくれると言えるでしょう。

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