北恵那鉄道大井線

北恵那鉄道大井線とは

北恵那鉄道大井線は、かつて岐阜県恵那市に存在した、北恵那鉄道が運営していた鉄道路線です。この路線は、現在の恵那市にあった新大井駅から大井ダム駅までを結んでいました。もともとは大井ダムの建設資材を運搬するために、大同電力（現在の関西電力）が敷設した専用鉄道でした。

路線成立の背景

大同電力によって建設された専用鉄道は、ダムの完成後、その活用法が検討されました。そこで、北恵那鉄道がこの路線を譲り受け、観光路線として旅客営業を開始することになりました。当初は蒸気機関車での運行が計画されましたが、最終的には合理化のため、日本車両製造製の小型ガソリンカー2両が導入されました。この2両が、最後まで大井線の旅客輸送を担いました。

期待と現実

北恵那鉄道は、恵那峡の観光客や大井ダムの従業員、そして木曽川対岸の笠置村や蛭川村の住民の利用を見込んでいました。しかし、実際には年間を通して安定した乗客数を期待することが難しく、不況の影響もあって利用者は伸び悩みました。一日あたりの利用者が100人に満たないという状況が続き、旅客営業は早期に休止されることになりました。

短命に終わった旅客営業

旅客営業休止後、路線は再び大同電力に移管され、1940年まで専用鉄道として使用されました。その後、ガソリンカーは宮崎交通に売却され、大井線は歴史の舞台から姿を消しました。旅客営業期間はわずか数年という短命に終わりました。

路線データ

路線距離: 4.3km（新大井駅 - 大井ダム駅間）
軌間: 1067mm
駅数: 3駅（新大井駅、金竜温泉駅、大井ダム駅）
複線区間: なし（全線単線）
電化区間: なし（全線非電化）

歴史

1922年（大正11年）3月: 大同電力専用鉄道として開通
1928年（昭和3年）: 北恵那鉄道への譲渡が決定。代償は2万円。
1928年12月3日: 北恵那鉄道大井線として旅客営業開始
1928年12月 - 翌年10月1日: 奥戸駅を大井ダム駅に改称
1929年（昭和4年）2月: 金竜温泉駅開業
1932年（昭和7年）9月: 休止
1934年（昭和9年）9月15日: 廃止、大同電力に再移管

駅一覧

新大井駅: 国鉄中央本線大井駅（現・恵那駅）の対岸に位置。
金竜温泉駅: 現在の恵那ラヂウム温泉付近にあったと推測される。
大井ダム駅（旧・奥戸駅）: 大井ダムの南側に位置していたと推測される。

接続路線

新大井駅: 国鉄中央本線、岩村電気軌道

廃線後の状況

現在でも、阿木川の支流である濁川沿いには、大井線の掘割や橋梁の跡が残っています。2009年には、岐阜県道沿いに大井線の歴史を説明する看板が設置されました。この看板は、かつてこの地に存在した鉄道の歴史を今に伝えています。

幻の鉄道

北恵那鉄道大井線は、短い期間しか旅客営業を行わなかったため、その存在を知る人は多くありません。しかし、ダム建設という時代の流れの中で生まれた鉄道であり、地域の歴史を語る上で重要な存在です。その短い生涯の中で、多くの人々の足として、また観光資源として利用され、その役割を終えました。

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