北村喜宣

北村喜宣

北村 喜宣（きたむら よしのぶ、1960年 - ）は、日本の行政法学者である。環境法、廃棄物法制、地方自治法、政策法務といった現代的な行政法の諸課題を専門とし、上智大学教授として教育・研究の第一線で活躍している。

経歴

京都市出身。神戸大学法学部、同大学院法学研究科で行政法を深く学んだ後、フルブライト・プログラムによる留学制度を活用してアメリカに渡る。カリフォルニア大学バークレー校大学院「法と社会政策」研究科にて学び、修士号を取得した。このアメリカにおける環境法に関する研究は、その後の氏の専門分野形成に大きな影響を与えている。帰国後、アメリカ合衆国連邦清浄水法に関する研究成果をまとめた学位論文により、神戸大学から法学博士の学位を授与された。

研究者としてのキャリアは、横浜国立大学経済学部の専任講師、助教授を経て、2001年より上智大学に移り、法学部教授に就任した。2012年からは上智大学法科大学院教授も務め、2014年4月から2016年3月にかけては法科大学院長として組織運営にも携わった。その後も再び法学部教授、大学院法学研究科委員長を歴任するなど、上智大学内で要職を担い続けている。

大学での職務に加え、学外でも多岐にわたる活動を行っている。2004年からの放送大学客員教授としての活動や、2006年から2015年まで司法試験の環境法に関する考査委員を務めた経験は特筆される。また、2022年からは内閣府土地等利用状況審議会委員に就任しており、理論と実務の両面から日本の行政法分野に貢献している。

研究と業績

北村氏の研究領域は広範にわたるが、その根底には常に、行政法の視点から現代社会が直面する複雑な問題への法的アプローチを探求するという姿勢がある。

特に環境法分野では、アメリカの法制度研究を出発点とし、日本の環境法体系の実効性確保や、廃棄物法制の変遷とその課題について詳細な分析を行ってきた。これらの研究成果は、政策形成や法改正の議論にも重要な示唆を与えてきた。

近年は、地方分権の進展に伴い重要性が増している地方自治体の役割に焦点を当て、「自治体行政法」や「政策法務」の研究を深化させている。自治体による条例制定権の活用、行政計画の策定、そして現代社会の課題である空き家問題への対応など、自治体が直面する具体的な問題に対し、法的なフレームワークの中でいかに創造的かつ効果的に政策を実行していくかという実践的な視点を提示している。この分野での『自治力』シリーズなどの著作は、研究者だけでなく、全国の自治体職員や関係者にとって必読の文献となっている。

主な著作活動

北村喜宣氏は極めて多作であり、単著、編著、共著を合わせて数十冊に及ぶ著作を公刊している。その学術的成果は広く認められており、版を重ねる教科書や専門書も多い。これらの著作は、日本の行政法学、特に環境法・自治体法制・政策法務分野の研究・教育において中心的な役割を果たしている。

代表的な単著としては、『環境法』（有斐閣、弘文堂）、『自治体環境行政法』（第一法規）、『政策法務がゆく！』（公人の友社）、そして地方自治体の政策形成に焦点を当てた『自治力』を冠する一連のシリーズなどがある。

著作の中には、学術的な評価を受けて受賞に至ったものもある。『環境法〔第2版〕』（有斐閣版）は都市住宅学会学会賞著作賞を、『プレップ環境法〔第2版〕』（弘文堂版）は不動産協会優秀著作奨励賞を受賞している。これらの受賞は、氏の研究がアカデミズムの世界だけでなく、都市計画や不動産といった実務分野への貢献も高く評価されていることを物語っている。

また、多数の編著や共著を通じて、他の研究者や実務家との共同作業の成果も発表している。『自治体政策法務の理論と課題別実践』、『空き家対策の実務』、『政策法務事典』といった多角的な視点から特定のテーマを掘り下げた書籍も多数発表しており、研究コミュニティにおける共同作業の重要性を示している。

北村氏の著作は、学術研究の深化に貢献すると同時に、現実社会の課題解決に向けた法的な知見を提供しており、日本の行政法学、特に環境法・自治体法制・政策法務分野におけるその影響力は大きい。

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