北条氏親

北条氏親：幻の嫡男、その短い生涯

北条氏親（ほうじょう うじちか）は、戦国時代の後北条氏に生まれた人物です。父は後北条家3代当主・北条氏康、母は今川氏親の娘・瑞渓院であり、4代当主となる氏政の兄にあたります。幼名は西堂丸（せいどうまる）、通称は新九郎（しんくろう）といいました。

近年、「大宅高橋家過去帳」の記載から、諱が「氏親」であることが判明しました。

生涯

天文6年（1537年）に北条氏康の長男として生まれた氏親は、天文18年（1549年）に弟の氏政とともに飛鳥井雅綱から蹴鞠の伝授を受けました。天文20年（1551年）末頃に元服し、「氏親」と名乗るとともに、北条家嫡男の通称である「新九郎」を名乗るようになりました。

研究者の黒田基樹氏は、「氏親」という名前は外祖父である今川氏親と同じであり、生母である瑞渓院が実父を敬慕する思いと、河東一乱で北条家を苦境に陥れた今川義元への対抗意識の表れではないかと推測しています。

また、『喜連川文書』に所収されている足利義氏関連文書の中にある、北条家一門による和歌短冊集に「氏親」の名が見られ、この人物が新九郎氏親であると考えられています。

元服後、氏親は武田晴信（信玄）の娘（後の黄梅院）を妻に迎える計画がありました。しかし、天文21年（1552年）3月21日に16歳という若さで急逝してしまいます。そのため、氏康は氏親の同母弟である次男の氏政を嫡子とせざるを得ませんでした。

氏親の早すぎる死は、後北条氏の歴史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。もし彼が長生きしていれば、後北条氏の勢力拡大や、その後の歴史は大きく変わっていたかもしれません。

参考文献

黒田基樹『戦国北条氏五代』戎光祥出版、2012年。
黒田基樹『北条氏康の子供たち』宮帯出版社、2015年。
黒田基樹『北条氏康の妻 瑞渓院』平凡社〈中世から近世へ〉、2017年。
黒田基樹『戦国北条家一族事典』戎光祥出版、2018年。

史料

* 『北条家過去帳』

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