北海道ちほく高原鉄道CR70形気動車

北海道ちほく高原鉄道CR70形・CR75形気動車

北海道ちほく高原鉄道CR70形およびCR75形は、同社がふるさと銀河線開業から2006年の廃線まで運用したディーゼルカーです。本稿では、これら同形系列の車両について解説します。

概要

これらの車両は、池田駅と北見駅を結んでいた旧国鉄池北線が第三セクター鉄道であるふるさと銀河線として転換開業するにあたり、主力車両として新潟鐵工所によって製造されました。同社が手掛ける地方交通線向け軽快気動車シリーズ、通称「NDC」の一員として、1988年（昭和63年）から1990年（平成2年）にかけて導入されました。総製造数は、CR70形が8両、CR75形が4両の合計12両です。

CR70形

車体と構造

CR70形は、新潟鐵工所製NDCをベースとした酷寒地対応設計が特徴です。車体は普通鋼製で、前面には貫通扉が設けられ、車体長は16m級、片側2扉、そして両端に運転台を持つ構造でした。これは、JR北海道で同時期に導入されたキハ130形と基本設計を同じくしています。

導入当初の6両は、製造元である新潟鐵工所から長距離の甲種輸送を経て、日本海縦貫線、函館本線、室蘭本線、石北本線を通り、北見駅で北海道ちほく高原鉄道に引き渡されました。特に、石北本線の北旭川～北見間での甲種輸送は、農産物出荷の最繁忙期である秋季に貨物列車が設定される区間ではあるものの、車両の輸送としては極めて異例の事例でした。

外観デザイン

前面窓には大型のパノラミックウィンドウが採用され、明るい視界を確保しています。ヘッドライトは貫通扉の上部に、手動式の方向幕は運転台の左上に取り付けられました。前面下部左右には前照灯と標識灯が配置され、側面にはワンマン運転に対応したサイドミラーが装備されています。

車体塗装は、白をベースに、窓の上部に赤、窓の下部には青と緑のラインがそれぞれ2本ずつ、計4本のラインが配されました。これらのラインは、「澄み切った青空の下、緑の高原を気持ちよく駆け抜ける姿」をイメージしたとされています。また、ラインの中には、沿線の1市6町を表す7つの星がデザインされました。貫通扉の下部や、右側の側窓と乗降扉の間には、北海道ちほく高原鉄道のシンボルマークが貼り付けられていました。

内装と主要機器

車内は、主にクロスシート配置で、トイレも設置されました。運転台のすぐ後ろには、ワンマン運転に必要な整理券発行機と運賃箱が備え付けられています。なお、冷房装置は搭載されていませんでした。定員は102名で、そのうち座席数は46名です。

走行性能を担う主要機器として、DMF13HS形ディーゼルエンジン（出力250ps/2000rpm）を1基搭載し、DBR115形変速機が組み合わされました。台車はNP122D形（動力台車）とNP122T形（付随台車）を採用し、最高速度は95km/hでした。

CR75形

CR75形は、CR70形と同形の車体構造と主要機器を備えています。内装も大半はCR70形に準じていますが、池田寄りの扉付近に飲料自動販売機が設置されている点が主な違いです。

CR75-1～3: これらの車両は、CR70形にビデオ装置と自動販売機を追加した仕様で製造されました。定員は100名（うち座席45名）でした。
CR75-101: 1990年（平成2年）に製造されたこの車両は、イベント対応仕様として登場しました。車内は通常のクロスシートではなくロングシート配置となっており、オーディオモニタ装置を装備していました。定員は104名（うち座席44名）です。

運用

ふるさと銀河線は1989年（平成元年）6月4日に開業し、当初はCR70形6両体制で運転を開始しました。同年7月下旬までにCR70形2両とCR75形3両が加わり、必要車両数が確保されました。同年8月6日のダイヤ改正からは、全線でのワンマン運転が開始されています。

日中は1両または2両編成での運用が中心でしたが、朝夕のラッシュ時には3両編成が見られました。また、イベント時には最大5両という、地方ローカル線としては珍しい長編成での運転も行われました。

しかし、利用客の減少に伴う運転本数の削減が進んだため、2000年（平成12年）にはCR70-4とCR70-5の2両が早期に廃車されました。これらの車両は部品取り用として、北見の車庫横に置かれていました。

利用促進策として、2002年には路線名の「銀河」にちなみ、CR75-2とCR75-3に松本零士氏の漫画『銀河鉄道999』の全面ラッピングが施され、運行を開始しました。このデザインは、当時のちほく高原鉄道専務が松本氏と手紙で交流があった縁で依頼されたもので、輝く銀河をイメージした濃い青色を基調とし、側面にメーテル、前面に星野鉄郎が描かれた人気の車両となりました。

この他にも、CR70-2は北海道新聞の広告ラッピングが施されていた時期があり、CR70-8は映画『GTO』の撮影に対応するため、方向幕に「札幌」の表示が追加されたこともありました。

ふるさと銀河線は2006年（平成18年）4月21日をもって廃止され、それに伴いCR70形・CR75形全車両が廃車となり、形式としては消滅しました。

廃車後の動向

廃止後、車両の一部は新たな活躍の場を見出しています。

CR70-1～CR70-3: これらの3両は、2007年にミャンマー国鉄へ譲渡されました。
CR70-6: 当初、埼玉県の鉄道愛好団体に譲渡され、旧美幸線の線路跡を利用した運転体験施設での活用が計画されていました。しかし、車両の輸送費用が課題となり構想は頓挫。解体される予定でしたが、北見市内の社会福祉法人の理事長が引き取り、自宅前に台車を取り外した状態で静態保存されることになりました。隣接する「ふるさと銀河食堂」（後に「ボンジュール銀河」と改称）と共に整備されていましたが、食堂閉店後、北見市内で事業を営む企業が車両を購入。手作業での修繕を経て、2023年4月からは「おにぎり屋 koko」として再活用されています。
* CR70-7・CR70-8・CR75形全車: CR70形の2両とCR75形の4両、合計6両は、廃止後、沿線自治体であった陸別町に譲渡されました。これらの車両は動態保存されており、2008年（平成20年）4月から旧ふるさと銀河線の線路の一部を利用した体験型鉄道施設「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」にて運転体験用として使用されています。

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