北薩トンネル

北薩トンネル

北薩トンネルは、鹿児島県薩摩郡さつま町と出水市を結ぶ、北薩横断道路の一部を構成するトンネルです。全長4,850メートルを誇り、鹿児島県内の道路トンネルとしては最長、九州地方でも4番目の長さを有しています。

概要

北薩トンネルは、紫尾山を貫通し、国道504号の旧道である堀切峠の隘路をバイパスする目的で建設されました。片側一車線の暫定二車線で供用されており、自動車専用道路となっています。このトンネルの開通により、きららICから高尾野IC間の所要時間は、従来の堀切峠経由の25分から9分に短縮され、冬季の積雪による交通規制も回避できるようになりました。

トンネルの記録

北薩トンネルの開通前は、奄美大島の網野子トンネルが鹿児島県最長の道路トンネルでしたが、北薩トンネルがそれを上回りました。2023年現在、国内の道路トンネルとしては28番目の長さであり、九州地方の無料道路トンネルとしては2番目の長さです。また、鹿児島県内には、北薩トンネルの近くに九州新幹線の第三紫尾山トンネルがあり、これは道路トンネルを含めた鹿児島県最長のトンネルとなっています。

沿革

着工までの経緯

北薩トンネルの建設前、国道504号の現道は堀切峠という狭隘な峠道でした。1993年に国道の一部となり、1994年には北薩横断道路の一部としてバイパス道路が計画されました。2004年に泊野道路の区間が事業化され、2005年に事業が開始されました。事業の目的は、現道の狭隘区間の解消による安全性向上と、鹿児島空港や北薩広域公園へのアクセス向上です。

工事の遅延

2007年には出水工区の入札が行われましたが、応札価格が低すぎたため保留となりました。その後、入札業者の不正が発覚し、入札が無効となり、工事が2年間遅れることになりました。その後、2度目の入札でさつま工区と出水工区の建設業者が決定しました。

着工と大量湧水

北薩トンネルは、2009年に出水工区から着工し、さつま工区も後に着工しました。トンネル工事は新オーストリアトンネル工法（NATM）で行われました。工事中、花崗岩と四万十層群の境界付近で大量の湧水が発生し、その湧水からは高濃度のヒ素が検出されました。このため、湧水量を減少させるための対策が必要となりました。

貫通と減水対策

2013年にトンネルは貫通し、その後、減水対策工事が行われました。グラウチング工法という特殊な工法が採用され、極超微粒子セメントが注入されました。この減水対策工法は、土木学会賞や日建連土木賞を受賞しました。

開通

2018年3月にはウォーキングイベントが開催され、その後、きららICから中屋敷ICまでの区間が開通し、供用が開始されました。

トンネルの一部崩落

2024年7月、トンネル内で大規模な崩落が発生し、通行止めとなりました。崩落は、湧水による地盤の隆起が原因とされています。崩落箇所は、工事中に大量の湧水が発生した場所であり、地層の境目にあたります。復旧には数年かかる見込みです。

この崩落事故の影響で、同様の湧水対策工法を用いているリニア中央新幹線の日吉トンネルでも、工法の見直しが検討されています。

隣接する施設

北薩横断道路
きららIC
北薩トンネル
中屋敷IC

脚注

参考文献

古田島信義、鈴木雅文、中出剛、片山政弘、手塚仁、木佐貫浄治 (2017), “北薩トンネルにおけるヒ素を含有するトンネル湧水の減水対策 - ダムのグラウチング技術を適用した山岳トンネルの岩盤グラウチング -”, 地盤工学ジャーナル
臼元直仁、大山洋一 (2016), “セメント注入に伴うトンネル湧水量、地三間隙水圧のモニタリング事例”, 全地連「技術フォーラム2016熊本」
角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典 46 鹿児島県』角川書店、1983年。

関連項目

延長別日本の道路トンネルの一覧（2018年現在、26位）
延長別日本の交通用トンネルの一覧（2018年現在、115位）

外部リンク

鹿児島県
北薩横断道路「泊野道路」の部分開通情報

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