北見神威岬

北海道北部、オホーツク海に突き出す「北見神威岬（きたみかむいみさき）」は、枝幸郡浜頓別町と枝幸町の境界に位置する岬です。この岬は、アイヌ語で「神の岬」を意味する「カムイエトゥ」に由来し、「ピリカノカ」、すなわち「美しい形」の一つとして2010年に国の名勝に指定されました。

地理と景観

岬の周囲は、斜内山の断崖が連なる雄大な地形を呈しています。その断崖の中腹には、印象的な縞模様が特徴の北見神威岬灯台が設置されています。岬の南側、枝幸町側には北見神威岬公園が整備されており、ここからは岬全体の景観を広範囲にわたって眺めることができます。オホーツク海に面しているため、冬には一面を覆う流氷が接岸する様子を見ることができ、その壮大な自然景観は訪れる人々を魅了します。

豊かな自然

北見神威岬とその周辺は、高山植物の宝庫としても知られています。数十種類に及ぶ色とりどりの植物が群生しており、季節ごとに異なる美しい花々を楽しむことができます。海岸線の厳しい環境に適応した多様な植物相は、この地の自然の豊かさを物語っています。

交通路の変遷

岬周辺の交通路には、独特の歴史があります。かつては国道238号が岬の地形に沿って曲がりくねっていましたが、1999年に岬の地下を貫く北オホーツクトンネルが開通したことで、この旧国道区間は町道へと変わりました。枝幸町側は町道神威岬線、浜頓別町側は町道斜内山道線として利用されています。また、2017年6月には石積みの擁壁が大規模に崩壊し、一時通行止めとなりましたが、復旧工事を経て2020年5月に再び通行が可能となっています。

鉄道の足跡

さらに古い時代の交通の痕跡も残されています。1985年に廃止されるまで、国鉄（当時）の興浜北線が、岬を通る山道「斜内山道」を経由していました。現在は海岸沿いを走る車道よりも一段高い位置に、当時の鉄道の線路跡と思われる段丘が確認でき、かつてこの地に鉄道が走っていた歴史を今に伝えています。

北見神威岬灯台

岬のシンボルともいえる北見神威岬灯台は、1962年12月8日にその光を灯しました。網走の能取岬灯台から稚内の宗谷岬灯台に至るオホーツク海沿岸において、最初に建設された灯台の一つです。この灯台のすぐ下を、前述の興浜北線が1985年まで通っていたという、興味深い歴史的な関係もあります。

アクセスと周辺

北見神威岬へのアクセスは、宗谷バスの「浜頓別線」を利用し、カムイ岬停留所で下車後徒歩約20分です。自動車の場合は、音威子府駅からおよそ1時間で到着できます。岬周辺には、前述の北見神威岬公園のほか、奇岩が点在するウスタイベ千畳岩、その近くにあるウスタイベ千畳岩キャンプ場、そして周辺を展望できる三笠山展望閣など、訪れる価値のあるスポットが複数あります。

北見神威岬は、国の名勝に指定された美しい景観に加え、豊かな自然、そして時代の変遷と共に姿を変えた交通路の歴史が共存する、興味深い場所です。オホーツク海の荒々しさと、可憐な高山植物、そして人々の営みの痕跡が織りなす独特の雰囲気を体感できるでしょう。

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