北谷稲荷神社

東京都渋谷区神南一丁目に位置する北谷稲荷神社は、渋谷の賑わいを象徴するエリアにありながら、静寂を保つ由緒ある神社です。現代的なデザインの社殿が特徴で、多方面から参拝者が訪れます。

歴史

当神社の正確な創建年は明らかではありませんが、その起源は室町時代に遡ると考えられています。江戸時代後期に編纂された武蔵国の地誌『新編武蔵風土記稿』には、文明年間（1469年～1486年）に駿河国からこの地に移り住んだ人物が、自身の屋敷の東北にあたる場所に神様を祀ったとの記述があります。この記録から、早ければ文明元年頃には現在の場所に鎮座していたと推定されています。また、1660年（万治3年）には社殿が大きく損壊し、その後に再建された際に作成された棟札にも神社の歴史を示す記録が残されています。長きにわたり地域を見守ってきた社殿は、1997年に現在の姿に生まれ変わりました。著名な建築家である菊竹清訓氏の設計によるこの改築により、北谷稲荷神社は伝統的な神社の雰囲気に加え、現代建築の洗練された美しさを兼ね備えることとなりました。

祭神

北谷稲荷神社では、複数の神々を主祭神としてお祀りしています。中心となるのは、全国の稲荷信仰の総本山である伏見稲荷大社などでも知られる稲荷神、すなわち宇迦之霊大神（宇迦之御魂神）です。五穀豊穣や商売繁盛など、人々の生活に根ざした幅広いご利益があるとされます。また、国造りの神話で知られる大己貴大神（大国主命の別称）も祀られています。さらに、天孫降臨に随伴したとされる重要な女神である大宮比賣大神（大宮能売神）や、歴史上の人物でありながら神として崇敬される神功皇后も祭神に名を連ねています。加えて、芸能の上達や長寿などにご利益があるといわれる大田大神も祀られており、様々な願い事を持つ人々がそれぞれの神様に祈りを捧げています。

境内と周辺環境

神社は、渋谷の主要な通りである渋谷公園通りとファイヤー通りに挟まれた一角に位置しています。周辺は、NHK放送センターや渋谷区役所といった公共施設に加え、多くのファッション関連の商業施設やオフィスビルが立ち並ぶ、東京都内でも特に人通りが多く活気あふれる繁華街の中心地です。このような賑やかな環境の中にありながら、境内は落ち着いた雰囲気で、都会の喧騒から一呼吸おける場所となっています。境内には、かつてのこの地の歴史を物語る二つの石碑が残されています。一つは、1909年（明治42年）にこの地に練兵場が設置された際に、そこで働いていた農民たちが建てたとされる石碑です。もう一つは、1920年（大正9年）に発生した宇田川の洪水による被害からの復旧を記念して建てられた治水記念碑です。これらの石碑は、開発が進む渋谷において、この地域が歩んできた歴史を静かに伝えています。

氏子地域

北谷稲荷神社は、渋谷区内において広範な氏子地域を擁しています。具体的には、神社の所在地である神南一丁目全域をはじめ、宇田川町の一部（1丁目～13丁目および14・15の一部）を含みます。また、渋谷一丁目の一部（21丁目～23丁目）、そして若者文化の発信地として国内外に知られる神宮前エリアの一部も氏子地域に含まれます。神宮前六丁目の一部（12、14の一部、5～19、21～26、27の一部）や、特に有名な神宮前一丁目の一部（7～9、14の一部、16・17・19・20）は、「原宿の竹下通り」とその周辺一帯に該当し、広範囲にわたる地域の人々の信仰を集めていることがわかります。

交通アクセス

北谷稲荷神社へのアクセスは、都内有数のターミナル駅である渋谷駅を利用するのが便利です。渋谷駅には、東日本旅客鉄道（JR東日本）の山手線、埼京線、湘南新宿ライン、成田エクスプレス。東急電鉄の東急東横線、東急田園都市線。京王電鉄の井の頭線。そして東京地下鉄（東京メトロ）の銀座線、半蔵門線、副都心線と、非常に多くの路線が乗り入れています。渋谷駅からは徒歩圏内であり、多様な交通手段を利用して容易に参拝することができます。渋谷の賑やかな街中にありながら、歴史と現代が融合したこの神社は、多くの人々に親しまれています。

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