北軍による海上封鎖

南北戦争における北軍の海上封鎖

南北戦争（1861年 - 1865年）中、アメリカ合衆国海軍によって実施された海上封鎖は、アメリカ連合国（南軍）の経済活動を大きく制限し、戦争の帰趨を左右する重要な戦略となりました。この封鎖は、南軍への物資や武器の供給を遮断し、南軍の弱体化を狙ったものです。

海上封鎖の概要

エイブラハム・リンカーン大統領は1861年4月19日に海上封鎖を宣言しました。これは、ウィンフィールド・スコット将軍が提唱したアナコンダ作戦の一環であり、南軍の海岸線約5,600kmと、主要な12の港湾を封鎖するものでした。北軍は、この目的のために約500隻の艦船を投入し、戦争中に約1,500隻もの封鎖突破船を破壊または捕獲しました。

しかし、封鎖突破船は6隻中5隻の割合で封鎖を突破することに成功していました。これらの船は、主にイギリスで建造され、高速で航行するために貨物積載量を極力抑えた設計でした。イギリス人船員によって操船され、中立港であるキューバのハバナ、バハマのナッソー、バミューダなどを拠点として、南軍の支配する港との間で物資の輸送を行いました。

海上封鎖の宣言と国際法上の意味

海上封鎖の宣言は、国際法上、南軍を独立した国家として認める行為だと解釈する者もいました。しかし、国際法では、海上封鎖を実施する国は、公海上で中立国の船舶を臨検する権利があるとされています。アメリカ合衆国は、イギリスとの紛争を避けるためにも、この国際法上の特権を必要としました。

1856年のパリ宣言に基づき、海上封鎖が合法であるためには、(1)正式に宣言され、(2)即座に確立され、(3)強制され、(4)有効である必要がありました。リンカーン大統領は、海上封鎖によって南軍を事実上の交戦相手国とすることで、イギリスやフランスなどのヨーロッパ列強が南軍を認知する可能性を切り開きました。

海上封鎖の実行

北軍は、海上封鎖戦略委員会を設置し、南部主要港を占領し、それを基地として海上封鎖を拡大する計画を立てました。初期段階では、大西洋岸に重点を置き、1861年11月にはサウスカロライナ州のポートロイヤルを占領。これにより、北軍は良好な港湾施設と修理設備を確保し、海上封鎖の拠点としました。フロリダ州のアパラチコラや、ミシシッピ川河口も初期の目標となりました。

北軍海軍は、当初わずか90隻の艦船しか保有していませんでしたが、大規模な建艦計画と民間船舶の買収により、1861年末までに160隻まで増強しました。海軍は15,000人増員し、24,000人の水兵を擁して、4つの戦隊を編成しました。

海上封鎖任務の魅力と封鎖突破船

海上封鎖任務は、危険を伴う一方で、高い報酬が期待できる任務でした。捕獲した船舶と積荷は競売にかけられ、その利益は水兵に分配されました。これにより、多くの兵士が海上封鎖任務に志願しました。

封鎖突破船は、小型で喫水が浅く、高速な船舶でした。主にイギリスで建造され、無煙炭を燃焼する蒸気機関を搭載していました。これらの船は、綿花などの輸出品と、武器、薬品などの輸入品を運び、莫大な利益を上げました。しかし、危険も大きく、捕獲されたり、沈没したりするリスクも常にありました。

海上封鎖の影響

北軍の海上封鎖は、南軍経済に壊滅的な打撃を与えました。綿花輸出は95%減少し、物資不足も深刻化しました。南軍は、食料を十分に生産していたものの、輸送手段が限られていたため、食料不足に悩まされる地域も存在しました。海上封鎖は、南北戦争における北軍の勝利に大きく貢献しました。

海上封鎖に対する南軍の抵抗

南軍は、封鎖網を突破するため、水雷艇などを開発し、北軍の封鎖艦隊に対抗しようとしました。また、人力潜水艦も投入しましたが、大きな戦果を挙げるには至りませんでした。

主要な戦闘

海上封鎖に関連する主要な戦闘としては、以下のようなものがあります。

チェサピーク湾封鎖 (1861年5月-6月)
カロライナ海岸封鎖 (1861年8月-12月)
プラスキ砦の陥落 (1862年4月11日)
ニューオーリンズの占領 (1862年4月)
モービル湾の海戦 (1864年8月5日)
フィッシャー砦の陥落 (1865年1月)

これらの戦闘を通じて、北軍は着実に封鎖網を拡大し、南軍の主要港を次々と封鎖していきました。

海上封鎖戦隊

海上封鎖に従事した北軍の艦船は、以下の戦隊に分かれていました。

北大西洋封鎖戦隊
南大西洋封鎖戦隊
メキシコ湾封鎖戦隊
西メキシコ湾封鎖戦隊

これらの戦隊は、担当海域において南軍の船舶の活動を阻止し、北軍の作戦を支援しました。

大衆文化における海上封鎖

映画『風と共に去りぬ』には、成功した封鎖破りとしてレット・バトラーが登場します。

結論

北軍の海上封鎖は、南北戦争における重要な戦略であり、南軍の経済を破綻させ、最終的に北軍の勝利に大きく貢献しました。封鎖突破船による活動も注目される一方、海上封鎖は、国際法上の問題や経済的な影響など、複雑な要素を含んでいたことがわかります。

参考文献

Browning, Robert M., Jr., From Cape Charles to Cape Fear. The North Atlantic Blockading Squadron during the Civil War. University of Alabama Press, 1993.
Buker, George E., Blockaders, Refugees, and Contrabands: Civil War on Florida's Gulf Coast, 1861-1865. University of Alabama Press, 1993.
Elekund, R.B., Jackson J.D., and Thornton M., "The 'Unintended Consequences' of Confederate Trade Legislation." Eastern Economic Journal, Spring 2004.
Greene, Jack, Ironclads at War, Combined Publishing, 1998.
Time-Life Books, The Blockade: Runners and Raiders. The Civil War series. Time-Life Books, 1983. ISBN 0-8094-4708-8.
Vandiver, Frank Everson, Confederate Blockade Running Through Bermuda, 1861-1865: Letters And Cargo Manifests (1947), primary documents
Wise, Stephen R., Lifeline of the Confederacy: Blockade Running during the Civil War. University of South Carolina Press, 1988.

外部リンク

National Park Service listing of campaigns
Book review: Lifeline of the Confederacy
Unintended Consequences of Confederate Trade Legislation
The Hapless Anaconda: Union Blockade 1861-1865
Sabine Pass and Galveston Were Successful Blockade-Running Ports By W. T. Block

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