北野大茶湯

北野大茶湯 (きたのおおちゃのゆ)

北野大茶湯は、1587年11月1日に京都の北野天満宮で豊臣秀吉が主催した大規模な茶会です。この茶会は、秀吉が九州平定を終えた後、自身の権威を示す目的で企画されたもので、周囲の期待を集めるものでした。

背景と開催の告知

秀吉は7月に九州を制圧しており、その成果を京都の朝廷や市民に知らしめるために、聚楽第の建設と同時にこの茶会を設けました。彼は7月末から、各地の大名や茶人に対し、10月上旬に茶会が行われることを伝える朱印状を送りました。特に、北野の森で10月1日から10日間にわたって大規模な茶会を開くと告知し、参加条件を詳細に説明しました。

参加者は、釜や釣瓶、茶道具が無い者でも代わりになる物を持参することで参加でき、服装や履物の規制は無く、身分を問わず参加が許されました。また、遠方からの参加者にも配慮し、茶会は10日まで開催されることが決定されました。これらの配慮にもかかわらず、参加しない者には今後の茶会への参加を禁止するとされたのです。

茶会初日

10月1日、茶会の初日には、北野天満宮の拝殿が区切られ、その中央には黄金の茶室が設置されました。ここには秀吉が自慢する名物茶道具が並べられ、茶菓子として麩焼き煎餅や真盛豆などが振る舞われました。この日、京都だけでなく大坂や堺、奈良からも多くの参加者が集まり、総勢1,000人に達したと言われています。

茶席では、秀吉自らが茶を振る舞い、名物を用いて茶を供するために、茶人として著名な千利休や津田宗及、今井宗久が迎えられました。参加者は無作為に選ばれ、3～5人ずつ招待されたため、身分に関係なく公平な進行が特徴的でした。秀吉はこの日、茶頭としての役割を果たしながら、会場内を満足げに視察し過ごしました。

茶会の中止

しかし翌日の茶会は中止となり、その後も再開されることはありませんでした。中止の理由については、1日の午後に発生した肥後国人一揆の知らせが秀吉の不満を呼んだとされる説が広まっています。しかし、参加人数が予想を下回ったために、秀吉が早々に茶会を終了させたのではないかとも言われています。

歴史学者の中村修也は、この茶会に関する様々な説を検討した結果、秀吉が人々の反応を見極める試金石とし、早期に終了させることで失敗を隠蔽しようとしたのではないかと考察しています。このように、北野大茶湯は豊臣秀吉の権威や茶道にかける情熱を示した重要なイベントであり、同時に彼の気まぐれが露呈した場でもあったのです。

参考文献

• - 竹内順一、田中秀隆、中村修也、矢野環『秀吉の智略「北野大茶湯」大検証』（淡交社、2009年） ISBN 4473035735

関連作品

• - 「へうげもの」 - 山田芳裕による漫画作品で、この茶会の様子が描かれています。
• - 「花戦さ」 - 鬼塚忠の小説を原作とした映画において、茶席の様子が描かれ、秀吉の黄金の茶席よりも池坊専好の花が注目されたことが中止の理由とされています。

関連項目

• - 醍醐の花見 - 秀吉の晩年に行われた大規模な花見で、この北野大茶湯と並ぶ重要な催事として知られています。

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