十全大補湯

十全大補湯（じゅうぜんたいほとう）

十全大補湯は、漢方薬の一種であり、元々は中国の古典である『和剤局方』に記載されている処方です。補益剤に分類され、体力の回復や滋養強壮を目的として用いられます。

組成

十全大補湯は、以下の10種類の生薬から構成されています。

黄耆（オウギ） 3.0g
人参（ニンジン） 3.0g
桂皮（ケイヒ） 3.0g
当帰（トウキ） 3.0g
川芎（センキュウ） 3.0g
芍薬（シャクヤク） 3.0g
熟地黄（ジオウ） 3.0g
白朮（ビャクジュツ） 3.0g
茯苓（ブクリョウ） 3.0g
甘草（カンゾウ） 1.5g

これらの生薬が組み合わさることで、体を温め、血を補い、気を高める効果を発揮すると考えられています。

適応症

十全大補湯は、以下のような症状や状態に効果が期待できます。

病後・術後の体力低下
疲労倦怠感
食欲不振
寝汗
手足の冷え
貧血

体力が低下している状態や、虚弱体質の方に適しています。

副作用・注意点

十全大補湯は、一般的に安全な漢方薬とされていますが、まれに副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが挙げられます。

偽アルドステロン症：血圧上昇、むくみ、低カリウム血症などが現れることがあります。
肝機能障害、黄疸：肝臓に負担がかかり、肝機能が悪化することがあります。
消化器症状：胃の不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などが現れることがあります。
皮膚症状：発疹、かゆみなどが現れることがあります。

また、服用にあたっては、以下の点に注意が必要です。

甘草が含まれているため、血清カリウム値や血圧に注意が必要です。異常が見られた場合は、服用を中止してください。
高齢者は生理機能が低下しているため、減量を考慮してください。
妊産婦、小児に対する安全性は確立されていません。
甘草含有製剤や、グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤との併用は、偽アルドステロン症やミオパシーのリスクを高める可能性があります。
著しく胃腸が虚弱な患者や、食欲不振、悪心、嘔吐がある患者は、慎重に投与する必要があります。

台湾における十全大補湯

台湾では、十全大補湯の材料を煮込んだスープが、薬膳料理として親しまれています。鶏肉、羊肉、排骨（スペアリブ）、ナマズなど、様々な具材を使ったメニューがあり、「十全○○」という名前で提供されています。台湾で「薬膳スープ」と言うと、これらの料理を指すことが多いようです。

その他

かつて薬用酒として販売されていた「薬寿」の処方には、十全大補湯と開心薯蕷腎気丸が参考にされたと言われています。また、八ツ目製薬からは「十全大補酒」という薬酒が販売されていました。

十全大補湯は、体質や症状に合わせて服用することで、体力の回復や健康維持に役立つ漢方薬です。服用する際は、医師や薬剤師に相談し、指示に従ってください。

関連項目

四物湯：十全大補湯から四君子湯・黄耆・桂皮を除いたもの
煎じ薬

外部リンク

十全大補湯（じゅうぜんたいほとう）：武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
* 十全大補湯：おくすり110番

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