十河一存

十河一存（そごう かずまさ / かずなが）：戦国時代の猛将

十河一存は、戦国時代に活躍した武将であり、三好氏の重臣として知られています。三好元長の四男として生まれ、後に讃岐国十河城主・十河景滋の養子となりました。その武勇は「鬼十河」と恐れられ、数々の戦でその名を轟かせました。

生涯

一存は、父の仇である三好政長との戦いで勝利に貢献し、兄・三好長慶の政権確立に大きく寄与しました。その後も、京都を奪還しようとする細川晴元を阻止し、阿波見性寺事件では次兄・実休を助けて細川持隆の殺害に協力するなど、三好氏のために力を尽くしました。永禄年間には、北白川の戦いや畠山高政との戦いで大勝し、長慶から岸和田城主に任じられるなど、その軍事的な才能を発揮しました。一存は、長慶の軍事面をよく補佐し、三好氏の勢力拡大に大きく貢献しました。

しかし、永禄4年（1561年）に病のため、和泉国で亡くなりました。その死因については諸説あり、後述するように暗殺説も囁かれています。

実子・義継は長慶に引き取られ、後にその家督を継ぎました。一存の死後、甥（実休の次男）の存保が養子となり、十河氏の家督を継ぎました。

死因と暗殺説

一存の死因は一般的に病死とされていますが、当時の京都では、不仲であった松永久秀による暗殺説が広まっていました。この説を裏付けるように、以下のような逸話が残されています。

『足利季世記』や『続応仁後記』によると、一存は病気療養のため有馬温泉に滞在していました。その際、久秀が「有馬権現は葦毛を好まない」と忠告したにもかかわらず、一存が葦毛の馬に乗ったところ落馬し、それが原因で亡くなったというのです。しかし、歴史研究家の長江正一は、病床の一存がわざわざ乗馬をするだろうか、また武勇に長けた一存が落馬するだろうかという疑問を呈しています。さらに、一存が亡くなった時期にも誤謬があり、この逸話の信憑性は低いとされています。

人物像と逸話

一存は、武勇に優れた猛将として知られています。合戦中に左腕を負傷した際、傷口に塩をすり込んで消毒し、藤の蔓を包帯代わりに再び戦場に立ったという逸話は、彼の勇猛さを象徴しています。このことから「鬼十河」と恐れられ、敵からはもちろん、家臣からも厚く信頼されていました。

また、一存の髪型である「十河額」を真似する家臣も多くいたと言われています。

松永貞徳は、俳句の師である九条稙通から「婿の十川は武勇である」という言葉を聞いたとされており、その武勇の高さを評しています。

一方で、松永久秀とは非常に仲が悪かったと伝えられています。

現代においても、一存の子孫と伝える十河家が続いています。

家臣

十河氏の家臣には、三谷氏、久保氏、岡氏などがおり、多くは四国の国人・武士でした。また、松田守興のように畿内で登用された者もいました。

以下は、主な家臣と関係者です。

十河了三（三河入道）
十河重久
十河重吉
十河亀介
東条新兵衛
大谷亀介
三谷喜介
岡重長
矢野山城守
松田守興
福屋長顕
中西長秀
久保一族
久保存重
久保六郎左衛門
久保佐渡守

関連作品

一存を題材とした小説も発表されています。

三日木人『三好長慶の遺命－篠原長房士魂録－』（郁朋社、2021年10月）
三日木人『われは鬼なり十河一存伝』（郁朋社、2022年9月）

まとめ

十河一存は、その武勇と豪胆さから「鬼十河」と恐れられた戦国武将です。三好氏の重臣として数々の戦で活躍し、その勢力拡大に大きく貢献しました。その死には謎も残りますが、その強烈な個性と武勇は、後世においても多くの人々に語り継がれています。

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