九条稙通

九条稙通について

九条稙通（くじょう たねみち）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した公卿であり、古典学者としても知られています。彼は左大臣・九条尚経の子供で、官位として従一位、関白、内大臣を歴任しています。稙通は九条家の16代目の当主で、一字名には「玖」や「身」が用いられていました。

生い立ちと初期の生活

稙通は永正4年（1507年）1月11日に誕生しました。彼は元服すると、室町幕府の第10代将軍・足利義稙から偏諱を受け、稙通と名乗ることとなります。若い頃は経済的に困難な状況にあり、堺や九州に住んでいたとの伝えも残っています。

永正11年（1514年）、父の尚経が従一位に任ぜられた際に、稙通も従三位に叙せられました。その後、内大臣に任命され、天文2年（1533年）には関白および藤氏長者としての地位を得るものの、経済的な事情により、天文3年（1534年）に辞任しました。さらに、彼は摂津や播磨での生活を余儀なくされます。

後年の活動と影響

天文15年（1546年）には、九条家の墓所である東福寺塔頭の大機院を重修し、弘治元年（1555年）には従一位に叙せられましたが、その後すぐに出家し、行空、恵空と名乗ります。その後は、地味な庵で過ごしながら、風雅や修行に打ち込んだとされています。また、天正元年（1573年）には洛西嵯峨野方面を訪れた紀行文『嵯峨記』を執筆しました。

天正4年（1576年）頃には、安芸で源氏物語を講義したという記録も残っています。実子として、戦国大名の三好家に嫁いだ娘と、二条尹房の子供の養子を迎えています。その後九条家の家域や記録を養子に譲りました。

学問と著作

稙通は外祖父である三条西実隆の影響を受け、古典学者としての名声を築きました。実隆からは『詠歌大概』や『源氏物語三ヶ大事相伝切紙』、さらには『百人一首』を伝授されています。稙通自身も多くの書物を執筆し、『伊勢物語九条禅閤抄』、源氏物語の注釈書『孟津抄』、『古今集秒』など、注目を集める作品が数多くあります。

逸話と人間関係

稙通は「飯綱の法」という魔術に興味を持っていたと言われ、自らその修練を積んでいたとされています。娘婿の十河氏を助けるために戦に出たこともあるそうです。また、尾張の戦国武将・織田信長との初対面では、官位に従った謁見を行い、これが信長の怒りを買ったとされる逸話が残っています。信長は身分に関係なく接することが求められる中、稙通は「家の恥を後世に残したくない」という信念からこのような行動を取ったようです。

また、豊臣秀吉による関白相論では、九条家が藤原氏の嫡流であるという主張をし、秀吉との力関係も暗示しています。

幸運と影響

稙通は余生を通じて多くの学者や武将と交流があり、古典文献への関心も深めました。特に『源氏物語』は長い間読み続けた作品であり、彼は息子である九条兼孝に秘伝を授ける意向を持っていました。このように多彩な人間関係と文化的な交流を通じて、稙通は一時代を築いた重要な存在でした。

結末

九条稙通は文禄3年（1594年）1月5日に88歳で亡くなりました。彼の生涯は、戦国時代における公卿の在り方や、学問への情熱を示すものであり、多くの後進に影響を与え続けました。

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