千坂高雅

千坂高雅：激動の時代を駆け抜けた米沢藩士

千坂高雅（ちさか たかまさ）は、天保12年（1841年）に米沢藩家老の家に生まれ、明治から大正にかけて活躍した官僚・政治家・実業家です。戊辰戦争では軍務総督として活躍し、維新後は内務省で要職を歴任、石川県令、岡山県令などを務め、貴族院議員にも選出されました。その生涯は、幕末から明治にかけての激動の時代を象徴しています。

幕末期

米沢藩家老として

千坂家は代々米沢藩の重職を務めた名門で、高雅は幼い頃から藩政に参画し、軍制改革を建議するなど、その才能を発揮しました。藩校興譲館では学頭として講義内容を刷新するなど、教育にも尽力しています。27歳という異例の若さで国家老に任じられ、藩政の中枢を担うことになりました。

戊辰戦争での活躍

鳥羽・伏見の戦いの後、米沢藩は奥羽越列藩同盟に加わり、戊辰戦争に参戦します。千坂は軍務総督として軍事に関する権限と機能を集中化した「軍政府」を設立し、軍政改革を断行。奥羽鎮撫総督府からの派兵命令を受け、新庄方面へ出兵します。その後、越後出兵が決定すると、千坂も越後へ向かい、河井継之助らと共に北越戦線の指揮を執りました。長岡城奪還作戦では、河井継之助の負傷という悲劇に見舞われながらも、新政府軍側の書簡から戦争の無意味さを悟り、総軍引き上げを決断。降伏後、千坂は名を改め謹慎に入りました。

戊辰戦争後の処分

米沢藩は4万石の削封という処分を受け、千坂も首謀者として処罰される可能性がありましたが、藩主上杉茂憲や宮島誠一郎らの尽力により、戦死した色部長門が首謀者として届け出られました。千坂自身もこのことを後で知ったと言われています。

明治期

大参事任命と辞退

明治2年（1869年）に謹慎を解かれた千坂は、朝廷から大参事に任命されますが、「奥羽越列藩同盟諸藩の家老の多くが戦死や処刑されているのに、自分だけが朝廷の政務に参与するのは申し訳ない」として固辞しました。

英国留学

明治4年（1871年）には、上杉茂憲の英国留学に随行し、ヨーロッパを視察しました。岩倉具視や大久保利通とも面会し、奥州鉄道建設や養蚕製糸の実情調査などを依頼されています。

内務省での活躍

帰国後、内務省に出仕し、行政官としてのキャリアをスタートさせます。大久保利通の下で、和歌山・茨城の暴動鎮圧や各県巡視に奔走し、地租改正事務にも従事しました。西南戦争では、新撰旅団参謀長として出征し、戦地で指揮を執りました。

石川・岡山県令、貴族院議員

内務省に戻った後は、石川県令、岡山県令を歴任し、地方行政に手腕を発揮しました。石川県令時代には、日本初の銅像であるヤマトタケル像を兼六園に建立。岡山県令時代には、児島湾干拓事業を巡る紛糾や、福田英子が設立した私塾の閉鎖問題など、様々な課題に取り組みました。明治27年（1894年）には、貴族院議員に勅選され、国政にも参与しました。

実業家として

実業界では、両羽銀行、宇治川水電、横浜倉庫などの重役を務め、経済発展にも貢献しました。横浜市神奈川区の千若町は、千坂と横浜倉庫専務の若尾幾造の頭文字から名付けられたと言われています。

晩年

明治31年（1898年）に錦鶏間祗候に任じられ、明治35年（1902年）からは叙爵運動を行いましたが、実現しませんでした。大正元年（1912年）に72歳で死去。その功績を称えられ、従三位が贈られました。墓所は山形県米沢市の日朝寺と東京都大田区の池上本門寺にあります。

千坂高雅は、激動の時代を生き抜き、多岐にわたる分野で活躍した人物でした。戊辰戦争での決断、内務省での地方行政、実業界での貢献など、その足跡は近代日本の発展に大きく貢献しています。

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