千本久信

千本久信：幕末維新を駆け抜けた越前福井の志士

千本久信（せんもと ひさのぶ）は、文政10年6月20日（1827年7月13日）に生まれ、明治18年（1885年）10月15日に没した、幕末の福井藩士であり、明治期には官僚・実業家として活躍した人物です。初名は弥三郎と称しました。

生い立ちと藩政への参与

越前国足羽郡福井下江戸町（現在の福井県福井市）で、福井藩士・千本久備の長男として生を受けました。幼少の頃より学問に励み、嘉永6年（1853年）には江戸で砲術調練を命じられ、その後、兵科関連の職務を歴任しました。

文久2年（1862年）には書院番格として江戸に詰め、松平春嶽の側近として活躍。公用人、目付、評定役、司計頭取、参政などの要職を歴任し、藩政に深く関与しました。春嶽の信任を得て、藩政改革に尽力したとされています。

明治維新後の活躍

明治2年（1869年）には福井藩権大参事に就任し、明治4年（1871年）には広島県権参事に発令されましたが、赴任途中に福井県（第一次）権参事となり、福井に戻りました。その後、足羽県が廃止されると権参事を免ぜられました。

官を辞した後、実業界に転身し、第九十二国立銀行支配人、桑蚕会社社長などを務めました。特に、旧福井藩士の授産事業に力を注ぎ、地域経済の発展に貢献しました。彼のリーダーシップのもと、多くの藩士が新たな生活基盤を築くことができたと言われています。

人物

千本久信は、学問に優れ、武芸にも長けた人物であり、その才能は藩内外で高く評価されていました。また、春嶽からの信頼も厚く、常にその傍らで藩政を支え続けました。明治維新後は、時代の変化に対応しながら、殖産事業に尽力し、福井の近代化に大きく貢献しました。その功績は、今もなお福井県民に語り継がれています。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
福田源三郎『越前人物志 上』玉雪堂、1910年。
『福井銀行八十年史』福井銀行、1981年。
三原孫七編『大日本国立銀行一覧表』三原孫七、1878年11月。
『福井藩士履歴 3け～そ 福井県文書館資料叢書11』福井県文書館、2015年、「千本弥三郎」252-255頁。

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