千羽ヶ嶽兵右エ門

千羽ヶ嶽兵右エ門の生涯と業績

千羽ヶ嶽兵右エ門（ちばがたけ ひょうえもん）は、1840年に阿波国勝浦郡（現在の徳島県勝浦郡）に生まれた力士で、本名は朝桐衑助（あさぎり れいすけ）です。彼はその体格、すなわち身長185cm、体重116kgは当時の横綱に匹敵する大柄な力士でした。力士としての彼の最高位は西前頭2枚目であり、さらには弓取という重要な役割も果たしました。そして、後に東雲として名を馳せる甥の存在も忘れてはなりません。

力士としての足跡

千羽ヶ嶽の相撲人生は、1861年の2月場所での初土俵からスタートします。彼は徳島藩のお抱え力士として相撲界に入ります。初土俵を踏んだのは二段目（現在の幕下）です。その後、彼の名声は急速に高まり、1866年の3月場所では東十両8枚目に昇進し、いきなり8勝1分けという好成績で優勝に相当する成績を収めました。この成功により、彼は僅か数場所のうちに十両を通過しました。

さらに彼は1867年4月場所で新入幕を果たし、土俵での活躍は続きます。この場所でも6勝2敗1休1分の成績を挙げ、その才能を示しました。

物言い騒動とその影響

しかし、1867年11月の場所では千羽ヶ嶽にとって運命的な事件が起こります。7日目の取組で、彼は國見山半五郎と対戦しました。そこでは激しい突っ張り合いが繰り広げられ、千羽ヶ嶽は技を駆使して國見山をうっちゃることに成功しますが、行司の判断には物言いがつきました。これにより、双方の応援団が激しい言い争いを繰り広げ、最終的に徳島藩の相撲係集団が千羽ヶ嶽の勝ちを主張し、混乱が生じたのです。

この騒動は徳島藩第13代藩主である蜂須賀斉裕の耳にも入ることとなり、彼もまた激怒しました。結果として、千羽ヶ嶽をはじめとするお抱え力士はボイコットという事態を引き起こします。この一件は、後に彼の土俵人生に大きな影響を及ぼすこととなったのです。

帰らぬ力士

ボイコット事件後、千羽ヶ嶽は本場所での土俵に立つことはなくなりました。その後の1868年、耳に入った斉裕の急逝や、健康状態が悪化したことから、彼はわずか29歳の若さで急死してしまいました。この事態に、周囲の人々は「事件の天罰」とさえ考えました。彼の活躍に期待されていた三役の地位も叶うことはありませんでしたが、彼の甥である東雲は、彼の死後55年経過した1923年に東小結に昇進し、夢を叶えました。

千羽ヶ嶽の記録と影響

彼の幕内通算成績は、3場所で10勝3敗3分14休、そして死後は残された番付によってさらに評価がされました。改名も行われ、東雲から千羽ヶ嶽兵右エ門となった由来もある力士です。彼の快進撃や事件が引き起こした影響も含め、相撲界における彼の足跡は今もなお語り継がれています。千羽ヶ嶽は若くして命を落としましたが、彼の名は今でも相撲ファンの記憶に残り続けているのです。

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