千葉県警察成田国際空港警備隊

千葉県警察成田国際空港警備隊

千葉県警察成田国際空港警備隊は、成田国際空港の警備を専門とする警察組織です。千葉県警察警備部に所属する執行隊として、空港の安全確保と各種テロ対策を主な任務としています。

歴史的背景

成田空港の建設は、当初から地元住民の激しい反対運動「三里塚闘争」に直面しました。この闘争は、新左翼などの過激派も加わり、空港建設を妨害するゲリラ活動へと発展しました。1978年には、開港直前に過激派が管制塔を占拠し破壊する事件が発生、開港が大幅に遅れる事態となりました。

この事件を契機に、政府は空港の安全確保を最優先課題とし、千葉県警察本部に空港警備隊準備委員会を設置しました。そして、1978年7月に新東京国際空港警備隊が発足、現在の成田国際空港警備隊へと至ります。当初は約600名でスタートしましたが、その後1500名体制に拡大。2018年度までこの規模を維持していました。

開港後も、2000年代に至るまで、過激派による空港施設や関係者への攻撃が頻発し、厳重な警備体制が敷かれていました。しかし、円卓会議などを通じて地域住民との和解が進み、反対運動の衰退や反対派メンバーの高齢化もあり、近年では過激な反対闘争は大幅に縮小しています。2015年には入港時の検問が原則廃止されるなど、利便性を重視した警備体制の見直しも進められています。

近年の組織改編

2018年12月に、警備体制の改編計画が発表されました。2019年度より、部内の配置を見直し、総員を1000名体制に縮小する一方で、銃器対策、NBCテロ対応、爆発物処理などの専門要員を増強しました。さらに2020年10月からは750名体制となっています。

任務

成田国際空港警備隊の主な任務は、成田国際空港の安全確保と各種テロ警戒です。三里塚闘争を契機に、常駐の強力な警備力が不可欠と判断され、警察制度上例外的な空港警備隊が創設されました。

空港及び関連施設の防護、過激派による妨害行為の防止・制圧、検挙を行うことが任務として定められています。また、航空機事故やハイジャック発生時の初動措置に対応するため、機動救助部隊、レンジャー部隊、爆発物処理部隊、銃器対策部隊などを編成しています。さらに、NBCテロ対策部隊や儀仗隊も設置されています。

空港におけるスカイマーシャル業務は、千葉県警察機動隊が担当しています。現在、年間約100回の割合で爆発物処理班が出動しており、その多くが空港内での不審な手荷物検査となっています。

組織の特徴

成田国際空港警備隊の最大の特徴は、全国の警察（皇宮警察を含む）から派遣された隊員で構成されている点です。千葉県警察に所属しながらも、隊員の半数は県警の定員枠外であり、1年または2年の期限付きで出向しています。この制度により、各都道府県警察のノウハウを融合させ、多様な脅威に対応できる能力を備えています。

出向期間中、隊員の身分は出身の都道府県警察官・皇宮護衛官から千葉県警察官に切り替えられます。

各隊の出向元

警備隊は、第一から第六までの空港機動隊に分かれており、各隊には以下の都道府県警察から出向者が派遣されています。

第一空港機動隊：警視庁、(宮城)、埼玉、岐阜、和歌山、岡山、徳島、鹿児島
第二空港機動隊：警視庁、(福島)、愛知、三重、奈良、山口、高知、熊本
第三空港機動隊：皇宮警察、秋田、群馬、神奈川、新潟、大阪、大分、宮崎
第四空港機動隊：警視庁、青森、長野、石川、京都、鳥取、香川、福岡、沖縄
第五空港機動隊：警視庁、山形、茨城、栃木、福井、兵庫、島根、広島、佐賀
第六空港機動隊：北海道、(岩手)、山梨、静岡、富山、滋賀、大阪、愛媛、長崎

各隊の人員配置は、出向元警察の実情を考慮し、特定の警察同士が同じ隊にならないよう配慮されています。また、2011年以降、東日本大震災の影響で、岩手・宮城・福島県からの出向は中止されています。

隊の編成

警備隊は、総勢約750名で構成される連隊編成です。

警備隊長（警視正：兼警備部参事官）
警備隊副長（警視）
本部：総務室、警備室、航空課
各空港機動隊：第一～第六機動隊

各室には、室長（警視）のほか、課長（警部）、係長（警部補）、主任（巡査部長）、課員（巡査）が配置されています。さらに、調査官（警部）や専門官（警部補）も置かれています。

空港機動隊は、機動隊長（警視）、副隊長（警部）の下、庶務班、警備班、操車整備班で構成され、さらに複数の小隊、分隊に分かれています。

参考文献

機動隊員等を励ます会（編）「新東京国際空港警備隊 25周年の軌跡」『はげまし』第350号、一般社団法人 機動隊員等を励ます会、2003年10月。

関連項目

成田空港問題
* 警視庁東京国際空港テロ対処部隊

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