千郷村

千郷村

概要

千郷村（ちさとむら）は、かつて愛知県南設楽郡に存在した村である。現在の新城市の西部地域に該当する。この村の名称は、明治時代に合併した千秋村（ちあきむら）と西郷村（さいごうむら）からそれぞれ一文字ずつを取って名付けられた合成地名である。村は昭和の大合併により消滅したが、その旧村域は現在、新城市の千郷地域自治区として地域活動の中心となっている。

地理

村域の地理的特徴として、おおよそ北半分が山地となっており、その最高地点は隣接する一宮村との境界付近に位置する標高約780メートル地点であった。この場所は、歴史ある砥鹿神社の奥宮にも近い。この山間部を源流とする境川は、一宮村との境界線に沿うように南へと流れ下り、村域の南端を流れる豊川に合流する。村の南部は比較的平坦な地形が広がっていたと考えられる。

歴史

江戸時代、この地域は三河国設楽郡の一部であり、幕府直轄の旗本領や寺社領などが混在する状況であった。明治時代に入り、近代的な地方行政制度が整備される中で、町村合併が推進された。その結果、1906年（明治39年）5月1日には、それまで存在した千秋村と西郷村が合併し、新たな村として千郷村が誕生した。その後、昭和の大合併期において、周辺自治体との合併が進められた。1955年（昭和30年）4月15日、千郷村は南設楽郡の新城町、東郷村に加え、八名郡の舟着村、八名村と合併し、自治体としての千郷村はその歴史を終え、新たに発足した新城町の一部となった。新城町はその後、周辺町村との合併を経て現在の新城市となっている。

交通

村域における鉄道交通の歴史は、明治時代末期に始まる。1898年（明治31年）4月25日、豊川鉄道（現在のJR飯田線の前身の一つ）が一宮駅（現在の豊川駅）から新城駅までの区間を延伸開業させた。これにより、地域住民の移動や物流が大きく改善された。さらに、この豊川鉄道線上に、1918年（大正7年）1月1日、野田城駅が開設された。この駅は、地域の中心的な交通拠点として機能した。その後、太平洋戦争中の1943年には、戦時体制強化のため豊川鉄道は国有化され、国有鉄道飯田線の一部となった。現在もこの区間はJR飯田線として運行されている。

社寺・史跡

村域には、古くから地域の人々の信仰を集めてきた社寺が存在する。その一つとして、泉龍院が挙げられる。また、歴史的な史跡としては、野田城址がある。野田城は戦国時代に重要な役割を果たした城郭であり、その跡地は地域の歴史を物語る貴重な遺構として現在も残されている。

このように、千郷村は短期間の存在ではあったが、地域の歴史において重要な位置を占めており、その名は現在の新城市の地域区分として受け継がれている。

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