千里眼

千里眼（せんりがん）

千里眼は、道教の神である媽祖に仕える存在の一つであり、未来の出来事を予知したり、遥か彼方の様子を見通す能力を持つとされています。この神は、元々は鬼神として知られていましたが、媽祖の教えに従って改心し、信奉者となったとも言われています。千里眼は、まるで眼前の現実を超えて、遠くの出来事やまだ実現していない未来を見透す力を象徴しています。

日本においては、明治時代に千里眼の能力を持つと称した御船千鶴子や長尾郁子が、福来友吉などの学者と共に「千里眼事件」と呼ばれる一連の公開実験や論争を引き起こしました。これにより、千里眼の存在が広く知られるようになり、またその能力に対する関心が高まりました。

由来について

千里眼の概念は、南北朝時代の文献『魏書』に登場する官僚、楊逸に由来すると言われています。楊逸は間諜を用いて役人たちを監視し、その悪行を暴いていたという逸話が残っています。このように間諜を使っていることを知らない周囲の人々は、彼が全てを見通していると恐れ、結果として楊逸に対する神秘的なイメージが形成されたとされます。この故事が千里眼という語の起源となり、特別な能力を持つ存在としての認識を強化しました。

似たような概念

千里眼に関連する言葉として、いくつかの類義語が存在します。例えば、「天眼通」という言葉は、普通の人間には見えない現象を見通す力を指します。また、「ESP（超感覚的知覚）」という用語も、思考のやり取りや未来の予知、透視といった特別な感覚能力を指す言葉として知られています。さらに、「透視」は隠された物体や事象を見る能力を意味し、これも超心理学の一分野として注目されています。

一方で、千里眼の対義語には「近視眼」があります。これは、目の前の状況や短期的な事象に気を取られ、将来的な視点を欠く状態を示す言葉です。また、「順風耳」という言葉も登場し、これは千里眼と対をなす存在として、全てのことを聞き取る能力を持つ神として知られています。

まとめ

千里眼は、道教の深い信仰にもとづく遠見の神秘的な力を象徴しており、また日本では近代においても人々の興味を引くテーマとして存在しています。千里眼事件は、その代表的な事例として語り継がれており、実験や考察を通じて能力の実在が検証されるなど、様々な議論の渦を巻き起こしました。このように、千里眼は信仰や心の探求において重要な位置を占める存在であり、現代においてもその影響が色濃く残っています。

もう一度検索