千里眼事件

千里眼事件の概要

千里眼事件とは、1900年代初頭の日本において、超心理学に関連した一連の騒動のことを指します。この事件は、当時の社会的および学術的背景の中で生じたもので、特に「千里眼」や「念写」といった超能力の実在についての公開実験や論争が特徴的です。

御船千鶴子の登場

事件の中心人物の一人、御船千鶴子は熊本県出身。彼女が「千里眼」能力の持ち主として注目され始めたのは、1909年のことでした。彼女の能力は、義兄である清原猛雄によって発見され、彼女はその後、心霊療法を通じて体内を透視する「治療」を行うようになりました。この時期、日本では催眠術が流行しており、多くの民間療法士が存在しました。

千鶴子は、東京朝日新聞に初めて取り上げられた後、東京帝国大学の学者たちとの実験を通じてその能力を証明しようとします。1910年2月には、今村新吉により透視実験が行われ、高い的中率を記録しました。次には、福来友吉との実験も行われましたが、すべてが成功するわけではなく、試験物の取り替え事件などが発生し、結果の信憑性が疑われることとなります。

長尾郁子の出現

長尾郁子は、香川県の判事の妻で、当時40歳でした。彼女もまた、災害予言などの能力が注目を集めていました。千鶴子のニュースを知り、実験を行った結果、的中したことから、福来に注目されます。1910年11月には初めての実験が行われ、郁子は千鶴子とは異なり、透明な位置から透視を行い、成功を収めていました。

郁子の実験では、福来が考案した現像前の乾板を使用し、いわゆる「念写」の実験が行われ、彼女は文字を念写することに成功しました。しかし、実験には多くの疑問点があがり、山川健次郎との実験では不審な点が次々と指摘されました。また、郁子の身近にいた催眠術師との関係が噂され、透視実験からゴシップへと関心が移ってしまいました。

事件の終焉

千里眼事件は、最終的に「千里眼は科学に非（あらず）」と結論づけられ、超能力者に対するマスメディアの攻撃が激化しました。この結果、公開実験の機会は失われ、事件は幕を下ろしました。この一連の事件は、千鶴子や郁子の死後も議論の余地を残し、その後の科学者に影響を及ぼしました。

福来友吉は、多数の批判にさらされる中、大学を辞職し、オカルティズムへと傾斜を深めることになります。事件の終局は、千鶏子と郁子に対する社会的非難の嵐を引き起こし、彼女たちの名を冠した「千里眼」能力者たちが後にペテン師として扱われることとなりました。結局、千里眼や念写の真実は闇の中に消え去り、研究者たちもその後のアプローチを見直すことになるのです。

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