協力手続

欧州連合における協力手続：その歴史と役割

[欧州連合]の立法プロセスにおいて、かつて重要な役割を果たした「協力手続」について解説します。これは、EUの政策決定における歴史的な転換点を示す重要な概念です。

協力手続は、EUの前身である[欧州共同体]の時代に、[ローマ条約]で規定されました。単一欧州議定書によって導入されたこの手続は、欧州議会が立法過程に大きく関与できるようになった転換期を象徴しています。従来、欧州委員会が主導権を握っていた立法において、欧州議会に二度の読会機会が与えられたことにより、法案への影響力を強めることができました。

マーストリヒト条約の発効後は、協力手続は幅広い政策分野で適用されました。具体的には、運輸、差別撤廃、欧州中央銀行と加盟国中央銀行の資金供給、欧州社会基金、職業訓練、汎ヨーロッパネットワーク、経済・社会の結合、研究、環境、開発協力、保健・労働者の安全確保、そして社会政策協定など多岐にわたります。これらの分野における政策決定は、協力手続を通じて行われていました。

しかし、アムステルダム条約によって、協力手続の適用範囲は大幅に縮小されました。多くの政策分野が「共同決定手続」に移行し、欧州議会の立法権限がさらに強化されました。これは、EUの立法プロセスにおける欧州議会の役割が、以前よりも一層重要になったことを示しています。共同決定手続では、欧州議会と欧州理事会が対等な立場として法案を協議し、合意に至るまで交渉を繰り返す仕組みです。

協力手続は、経済・通貨統合という限られた分野で適用されていましたが、2000年2月の政府間協議(IGC)において、欧州委員会は協力手続から共同決定手続への移行を主張しました。この主張は、EUの立法プロセスにおける透明性と民主主義性を高めるという、当時のEU全体の趨勢を反映していると考えられます。

協力手続は、共同決定手続に取って代わられ、現在ではほとんど適用されなくなりました。しかし、EU法の歴史を理解する上で、協力手続は重要な要素であり、欧州議会の権限拡大というEU統合のプロセスにおける重要なステップを示しています。

関連事項

諮問手続: 欧州議会は法案に対して意見を述べる権限を持つものの、最終的な決定権は持ちません。
共同決定手続: 欧州議会と欧州理事会が対等な立場として、法案を協議し決定する手続。現在、EUの主要な立法手続です。

協力手続は、EUの立法プロセスにおける歴史的変遷を理解するために不可欠な要素であり、欧州統合の歴史を紐解く上で重要な役割を果たしています。

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