南アルプス号 (高速バス)

南アルプス号：新宿と伊那を結んだ高速バス路線の軌跡

かつて東京都新宿と長野県伊那市を結んでいた高速バス路線「南アルプス号」は、JRバス関東伊那支店の採算性向上と東京支店への乗務員輸送を目的として2001年4月1日に運行を開始しました。当初はJRバス関東単独運行で会員制でしたが、利用客の増加が見込めず、2005年には伊那バスと京王電鉄バスが参入し、路線経路の変更と増便が行われました。しかし、期待されたほどの利用客増加には至らず、2007年には減便、そして2009年7月31日には惜しまれつつも路線は廃止されました。

南アルプス号は、中央自動車道を経由する路線でしたが、京王電鉄バスが参入していたにも関わらず、JRバス関東主導の路線であったため「中央高速バス」には含まれていませんでした。そのため、中央高速バスの予約サイトでは予約ができませんでしたが、「高速バスネット」での予約と「ネット割」の適用が可能でした。

運行開始当初は、1日2往復で、新宿駅新南口から伊那里までの運行でした。途中、守屋登山口付近の一般路線バス停での降車も可能でした。車両は、当初は中国JRバスから移管されたボルボ・アステローペを使用していましたが、後にエアロクィーンMに更新されました。2005年の増便時には、他社と同様の4列シートのハイデッカー車両に変更されています。

路線廃止後、京王電鉄バスは、中央高速バス伊那線とJRバス関東の高遠線の乗車券をセットにした連絡きっぷを発売開始しました。これは、南アルプス号の廃止後も、新宿と伊那地域を結ぶ交通手段を提供し続けるための取り組みでした。

南アルプス号は、利用者数の低迷が廃止の大きな要因でした。当初想定していた1日平均30人の利用客には遠く及ばず、路線変更や増便策も効果が限定的でした。JRバス関東は、年間3000万円の赤字を計上していたとされています。無料駐車場は、伊那里、仙流荘、道の駅南アルプスむら、高遠さくらホテル、松島、伊北インター前に設置されていました。

南アルプスジオライナー：新たな南アルプスへのアクセス

南アルプス号の廃止から数年後の2013年9月14日、中央本線茅野駅から南アルプス北沢峠の玄関口である林道バス営業所（仙流荘）を結ぶ路線バス「南アルプス号」が運行を開始しました。こちらは、南アルプス号とは異なる一般路線バスです。

この路線は、JRバス関東中央道支店が担当し、7月中旬から11月上旬の土日祝日と、8月上旬は毎日運行されています。1日1往復で、茅野駅と仙流荘を約1時間30分で結んでいます。仙流荘への到着時には、入浴・食事割引券が配布されます。さらに、仙流荘から南アルプス林道バスに乗り継ぐことで、北沢峠へのアクセスも容易になっています。

運行開始当初は途中バス停をすべて通過していましたが、後に高遠駅に停車するようになり、さらに2016年には守屋山登山客への需要に対応するため、杖突峠と守屋登山口にも停車するようになりました。そして、「南アルプスジオライナー」という愛称も与えられました。この路線は、南アルプスへのアクセス向上に貢献しており、登山客や観光客にとって重要な交通手段となっています。

南アルプス号と南アルプスジオライナー、異なる形態ながらも、共に南アルプスへのアクセスを担ってきた路線です。南アルプス号は、その歴史とともに多くの教訓を残し、南アルプスジオライナーは、新たなアクセス手段として地域社会に貢献しています。それぞれの路線が、地域交通の歴史の一端を担っていると言えるでしょう。

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