南俊夫

南 俊夫

南 俊夫（みなみ としお）は、1912年（明治45年）に香川県綾歌郡で生まれた実業家であり、政治運動家です。彼の没年は明らかになっていません。

略歴

香川県綾歌郡綾上町（現在の綾川町）に生を受けた南は、1929年に単身上京します。酒屋での丁稚奉公をはじめ、様々な職を転々としながら苦学を続け、早稲田大学に進学しました。1937年に同大学政治経済学部を卒業後、中外製薬に入社。その後、三共に転職しています。

終戦後数年を経て、彼は実業家として独立。東京都台東区上野に拠点を置き、医薬品の卸売業と旅館経営を手掛けました。上野広小路駅や田原町駅周辺に事務所を構え、上野ホテル旅館組合の理事長を務めるなど、地元の実業界でも活動しました。

政治活動

南の人生において大きな転機となったのは、1959年のことです。彼は世界連邦運動に共鳴し、独自に世界連邦の実現を目指す政治活動を開始しました。当時の世界連邦建設同盟（現：世界連邦運動協会）とは直接的な関係を持たず、独自の団体である『世界連邦推進委員会』、『世界政府創設委員会』、『世界連邦推進全国協議会』などを立ち上げ、自らをこれらの団体の書記長や事務局長、あるいは『世界連邦創始者』、『世界人類仲よし会代表』と称しました。

彼は「世界連邦推進」、「反戦・平和」、「核廃絶」、「軍拡反対」、「政界浄化」、「公明選挙」、「税制改革」、「福祉の充実」、「国民生活の安定」といった、穏健かつリベラルな政策を掲げ、30年以上にわたり国政選挙や東京都知事選挙に挑戦し続けました。しかし、その挑戦は一度も当選に結びつくことはなく、総て下位での落選に終わり、供託金を失う結果となりました。

彼の政治活動は、他の保守系政治団体との関わりも指摘されています。『大日本独立青年党』の清水亘が主導した『議会主義政治擁護国民同盟（議擁同）』に、有田正憲、小田俊与、深作清次郎、杉本一夫、岸本力男、福田進、山陰探月、別城遺一といった面々と共に参加しています。この議擁同は、革新勢力に対する選挙妨害や票の切り崩しを主な目的としていました。南自身が議擁同の公認や推薦を得て立候補する機会は少なかったものの、概ね清水と同一の選挙区で共闘する関係にありました。

また、南の活動には、政策の穏健さとは裏腹に、街宣右翼や総会屋といった特定の勢力に政治活動の便宜を図らせるなど、時に批判される側面も含まれていました。これは同時期に活動していた『日本世直し党』の重松九州男にも共通する特徴であったとされています。

1983年の第13回参議院議員通常選挙では、『日本国民政治連合』の確認団体公認候補として、杉本一夫や福田拓泉の仲介により応集しています。この選挙では、深作清次郎、石川八郎らと共に東京都選挙区から集団で出馬しました。

彼の選挙公報は生涯にわたり自筆で作成され、「丁稚の小僧を振出しに…」と始まる略歴には、若き日の苦難や努力が滲み出ていました。

選挙活動に関連して、南は憲法および公職選挙法の違反を主張し、複数回にわたり選挙無効訴訟を提起しました。しかし、これらの訴えはいずれも最高裁判所によって退けられています。

南が最後に出馬した選挙の翌年である1992年4月1日をもって、彼が代表を務める『世界連邦推進委員会』は、政治資金規正法第17条第2項の規定（収支報告書の未提出）により、政治活動のための寄付の支出または受領が認められなくなりました。

著書

* 『岐路に立つ 世界連邦実現の近みち』（世界連邦日本国民会議、1966年）

関連項目

清水亘、有田正憲、杉本一夫、福田拓泉、重松九州男、泡沫候補

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