南向ダム

南向ダムについて

南向ダム（みなかたダム）は、長野県の駒ヶ根市に位置し、一級河川である天竜川水系に構築された重要なダムです。このダムは、高さ7.57メートルの重力式コンクリートダムで、通称として吉瀬ダムや吉瀬えん堤とも呼ばれています。主に、中部電力が管理する発電用のダムとしての役割を果たしており、南向発電所に水を供給します。この施設は最大で26,700キロワットの電力を生成することができます。

歴史的背景

南向ダムの建設は、1926年（大正15年）に発足した天竜川電力が始まりの一歩を踏み出したことに端を発します。同年の11月には大久保発電所の工事が開始され、その後1927年（昭和2年）に南向発電所の建設に着手しました。このプロジェクトの初期段階では、大久保発電所によって工事用電力が確保され、完成後には南向発電所が本格的に建設されました。

特に注目すべきは、ダムの建設に伴い設けられた水路の長さが当初の計画よりも1,305メートル伸びたことです。このことによって有効落差が増加し、出力も21,300キロワットから24,100キロワットに引き上げられました。また、発電用水車や発電機には当時の最先端技術が投入されており、スウェーデンのボービング製の水車と、イギリスのブラウンボベリ製の発電機を使用しています。

1929年（昭和4年）には主要工事が終了し、翌年には南向発電所が運転を開始しました。この発電所は、その後大同電力によって電力供給が行われ、伊那谷地域において154キロボルトでの高圧送電が実現しました。中部電力による管理の下、南向発電所は今でも活躍しています。

現在の状況

2015年には、南向発電所取水堰堤として土木学会選奨土木遺産に指定されたこともあり、その重要性が改めて認識されています。周辺地域は「みなかた広場」として整備されており、訪問者がダムや発電所の風景を楽しむことができます。

周囲には、ダムを一望できる吉瀬橋や、鳥瞰的な眺望を持つスポットが点在しており、長野の自然を満喫できる場所でもあります。また、村営の巡回バスが運行されており、JR飯田線の伊那大島駅からもアクセスできるため、観光客にも親しまれています。

福澤桃介とその影響

南向発電所の建設に深く関与したのは、天竜川電力の代表取締役であった福澤桃介です。彼はこのプロジェクトの完成を見届けることはありませんでしたが、彼の業績は南向発電所に色濃く残っています。「福澤桃介先生壽像」という胸像がみなかた広場に安置されており、その背後には彼の言葉「水然而火」が彫られたレリーフがあります。これは水力発電が人々の生活にとって重要な基盤であることを示しています。

南向発電所では、1993年に発電所の完成70周年を記念し、詩碑や水車などが展示されています。これらの展示物は、歴史的背景とともに南向ダムが持つ意味をより深く理解する助けとなります。

このように、南向ダムは歴史的・技術的意義を持ち続け、地域の電力供給に貢献しているだけでなく、訪れる人々にその魅力を伝える観光名所でもあります。

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