南洋艦隊

南洋艦隊の歴史

南洋艦隊（なんようかんたい）は、清朝海軍に属する艦隊で、中国語では「南洋水師」と呼ばれています。この艦隊は、19世紀後半に編成された清朝の近代海軍の中でも四水師（北洋、南洋、福建、広東）の一つであり、その中では最も規模が小さいものとして知られています。歴史的にはあまり知られていない存在でもありますが、中国海軍の歴史において重要な役割を果たしました。

南洋艦隊の前史

清朝の成立初期から、沿岸の治安維持のためにジャンク船を中心とした緑営水師が保有されていましたが、19世紀までその編成や装備の更新が行われることはありませんでした。1840年の阿片戦争では、イギリスやフランスの近代海軍に対し惨敗を喫します。この影響を受けて、1851年の太平天国の乱を契機に、清朝は江南の防衛を目的として近代海軍の設立を決定しました。

この任務は、イギリス海軍出身のオズボーン大佐に託され、彼の指導の下で6隻の艦船が購入されましたが、1863年には指揮権を巡る対立が生じ、オズボーンは解任されて艦隊は解散しました。艦船はその後、日本を含む外国に売却されていきました。

南洋艦隊の設立と運用

清朝の近代海軍は1866年から1871年にかけて各地域の督撫によって編成されました。そのため、南洋艦隊も皇帝の指揮下にありながら、地方の有力者の私兵という微妙な立場にありました。南洋水師は1867年に曽国藩によって設立され、上海を拠点に長江沿岸の防衛を担当することとなります。

この時期、江南製造局が設立され、福建艦隊の福州船政局に次ぐ規模の造船所としての機能を果たしました。1880年代の初めには、ドイツから購入した巡洋艦「南琛」「南瑞」や国産の砲艦を保有し、一定の戦力を持つようになりました。しかし1885年に勃発した清仏戦争では、福建水師への救援として出撃したものの、出発前に福建水師がフランス艦隊に壊滅させられ、南洋水師も迎撃に失敗し、敗走しました。

海軍予算の集中

清仏戦争の後は、台湾の領有と朝鮮への宗主権を巡る日本との緊張が高まりました。そのため、海軍予算は李鴻章が指揮する北洋水師に集中され、江南製造局も陸軍向けの銃器生産にリソースをシフトしました。この結果、南洋艦隊の戦力は次第に縮小していきました。

1894年の日清戦争においても、南洋水師は北洋水師を加勢することなく、主に台湾方面の警備に当たっていました。この険しい状況にもかかわらず、南洋艦隊は北洋水師が壊滅した際には、清朝にとっての重要な海上戦力となっていました。

長江艦隊への移行

1898年までに北洋水師の再建が進む中で、他の水師は大型艦を徴収され、砲艦中心の小艦隊に成り下がりました。1900年には、再建された北洋艦隊も義和団事件で敗北し、1905年には四水師が解体されて清朝直属の海軍に統合されました。

最終的に1909年には、清朝の水上戦力が大型艦を集中的に運用する巡洋艦隊と小型艦主体の長江艦隊に再編成され、南洋艦隊は中華民国の海軍へとつながる重要な一部とされました。南洋艦隊の歴史は、清朝から中華民国へと繋がる海軍の変遷を象徴するものでもあるのです。

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