南美唄支線

南美唄支線は、かつて北海道空知地方の美唄市に存在した日本国有鉄道（国鉄）の鉄道路線です。美唄駅と南美唄駅間の短い区間を結び、1931年（昭和6年）から1973年（昭和48年）までの約42年間にわたり営業しました。この路線の敷設は、沿線に位置する三井美唄炭鉱で採掘される石炭を効率的に運び出すことを主な目的としていました。

路線の概要

この支線は、美唄駅から南美唄駅までのわずか3.0キロメートルの距離でした。軌間は当時の国鉄の標準的な1,067ミリメートル（狭軌）を採用。全線が単線で、電化されていない非電化区間でした。設置された駅は、起点の美唄駅と終点の南美唄駅の二つのみです。

運行形態

運行の中心は、美唄駅と南美唄駅の間を往復するピストン輸送でした。これは主に貨物列車、特に石炭を満載した貨車を輸送するためでした。しかし、旅客営業が開始されてからは、通勤・通学や地域の移動手段としても利用されました。最盛期には、朝の時間帯に札幌や小樽から直接南美唄駅まで乗り入れる直通列車も設定されており、短距離ながら広範なネットワークの一部としての機能も持っていました。

沿革

南美唄支線の歴史は、美唄炭鉱の歴史と密接に結びついています。1928年（昭和3年）、三井鉱山は経営が悪化していた日本石油光珠炭鉱の権利を取得し、三井美唄炭鉱として操業を開始しました。炭鉱の本格的な稼働には大量の石炭輸送手段が必要不可欠であり、国鉄に対して専用線の敷設が申請されました。これにより、1931年（昭和6年）11月に新たな鉄道路線の建設工事が完了し、同年12月1日、函館本線の貨物支線として正式に開業しました。当初は貨物輸送のみを行い、終点には貨物専用駅として南美唄駅が設けられました。

炭鉱の発展とともに周辺地域の人口が増加し、地域住民からの旅客輸送への要望が高まりました。これに応える形で、1944年（昭和19年）1月25日からは旅客営業が開始され、南美唄駅も貨物と旅客を取り扱う一般駅に改められました。1958年（昭和33年）5月には、気動車（ディーゼルカー）が導入され、客貨分離が行われました。

しかし、1960年代に入ると、日本における主要エネルギー源が石炭から石油へと転換するエネルギー革命が進展し、石炭産業は斜陽化していきます。主要な輸送元であった三井美唄炭鉱は、石炭需要の減少を受け、1963年（昭和38年）に操業を停止しました。これにより、路線の利用者は激減します。まず、1971年（昭和46年）8月3日をもって旅客営業が廃止され、南美唄駅は再び貨物専用駅となりました。

最終的に、三井美唄炭鉱の子会社として残っていた三美鉱業が1973年（昭和48年）3月に閉山したことにより、石炭輸送の必要性が完全に失われました。これに伴い、南美唄支線もその役目を終えることになり、1973年（昭和48年）9月9日をもって貨物営業も廃止され、全線が廃止となりました。南美唄駅もこの日をもって廃止されています。

駅と接続路線

南美唄支線に存在した駅は以下の通りです（廃止時点）。

美唄駅: 国鉄函館本線との接続駅でした。かつては、三菱鉱業が運営し、盤の沢方面へ伸びていた三菱鉱業美唄鉄道線（1972年6月1日廃止）とも接続していました。
南美唄駅: この路線の終点であり、三井美唄炭鉱（後に三美鉱業）へ向かう約1.2キロメートルの専用線（三井美唄炭鉱専用線／三美鉱業専用線、1973年3月廃止）が接続していました。この専用線では、ボールドウィン製やノース・ブリティッシュ製の蒸気機関車が石炭列車の牽引にあたっていたことが伝えられています。

南美唄支線は、炭鉱の盛衰という地域の歴史と共に生まれ、そして消えていった鉄道路線です。短い区間ながら、産業と人々の生活を支えた存在として、その軌跡は記録されています。

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