博多湾鉄道汽船デハ10形電車

博多湾鉄道汽船デハ10形電車

博多湾鉄道汽船デハ10形電車は、西日本鉄道の前身である博多湾鉄道汽船が1936年に導入した電車です。この列車は、同鉄道が運行する貝塚線（後の西鉄宮地岳線、現在の西鉄貝塚線）の輸送力向上を目的として設計されました。

車両の特徴と設計

デハ10形は、当時既に在籍していたデハ1形に続く形式として、新たに制御電動車のデハ10・11の2両が製造されました。従来のデハ1形とは異なり、デハ10形は17m級の2扉車体を持ち、車内はクロスシートに改良されており、利用者の居住性と輸送能力の双方が向上しました。この大型化によって、主電動機の出力も強化され、より優れた走行性能が実現されました。

デハ10形は、博多湾鉄道汽船において最後の新設計車両となり、1945年には西日本鉄道の成立に伴い車両番号が改編されてモ10形11・12に変更されました。その後、1979年まで宮地岳線で運行され続けました。

車体構造

デハ10形の全長は16,850mm、車体長は16,000mmで、半鋼製の構体が使われています。前面は平妻形状で、特徴的な窓配置が施されています。運転台は両運転台構造で、片隅式の運転台が右側に設けられているのが特徴です。側面には乗客用の片開扉と2段窓があり、客室の構成はセミクロスシートとロングシートの組み合わせとなっています。

主要機器

制御装置には電空単位スイッチ式間接非自動制御（HL制御）が使用され、主電動機には三菱電機製の直流直巻電動機MB-98-Bが搭載されています。各車両には4基が取り付けられ、これにより出力が大幅に向上しました。台車はボールドウィンA形台車を基にした設計で、車両の走行性能を高めるために工夫されています。

運用と改造

1945年の戦時統合後、デハ10・11の主電動機は半減され、主電動機2基の仕様に改造されました。この変更は、宮地岳線の輸送力を強化するために必要なものでした。1952年には主電動機が国鉄制式のMT40に換装され、さらにロングシート化や客用扉の改造も実施されました。

この電車は運行の晩年に、窓のアルミサッシ化などが行われ、1979年には博多湾鉄道汽船デハ10形から除籍されるまで、宮地岳線で運行を全うしました。

デハ10形13について

デハ形の中にはデハ13という車両も存在します。この車両は1938年に鉄道省からの払い下げによって導入され、大正時代に製造された車両が原型でした。デハ13は改装後、主に宮地岳線で運用されることとなり、1977年に廃車となるまでその役割を担いました。

結論

博多湾鉄道汽船デハ10形電車は、当時の技術を駆使し、輸送力の強化と快適な移動環境を提供するために設計されました。これにより、戦後の福岡地区の交通インフラにおいて重要な役割を果たした電車となりました。

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