原尿

原尿（げんにょう）

原尿とは、腎臓の構造単位であるネフロンの中で、血液が濾過されて生成される初期段階の液体のことを指します。具体的には、腎臓の皮質に存在する糸球体と呼ばれる毛細血管の塊から、周囲を取り囲むボーマン嚢へと血液成分が押し出されてろ過された液のことです。

この濾過プロセスは、血液が糸球体毛細血管を流れる際に生じる高い血圧によって行われます。血液中の水分や小さな分子は、糸球体毛細血管の壁とボーマン嚢の壁（正確には、両者の間にある基底膜や足細胞のスリット膜など、複雑な濾過膜構造）を通過できますが、比較的大きな分子である蛋白質や血球成分などは通常、この濾過膜を通過することができません。

その結果、ボーマン嚢に濾し出される原尿の成分は、血液中の血漿から蛋白質や血球を取り除いたものとほぼ同じになります。具体的には、水分を主成分として、尿素のような体内で不要になった老廃物、ブドウ糖やアミノ酸のような体に必要な栄養分、そしてナトリウムやカリウムなどの重要な電解質が含まれています。

この時点では、体にとって必要な成分（栄養分や水分、電解質）と不要な成分（老廃物）が混在しており、その成分構成は血液と似ていますが、蛋白質がほとんど含まれていない点が大きく異なります。また、この液体はまだ最終的な「尿」ではありません。

ボーマン嚢で生成された原尿は、その後、ネフロン内の長く曲がりくねった管である尿細管へと流れ込みます。ここで、原尿は劇的な変化を遂げます。尿細管の壁細胞は、原尿の中から体にとって必要な成分を選択的に血液中へと再吸収する働きを担っています。

例えば、生命活動に不可欠なブドウ糖やアミノ酸は、健康な状態であれば尿細管でほぼ100%再吸収されます。水分やナトリウムなどの電解質も、体の状態に応じてその多くが再吸収されます。これにより、体内の水分量や電解質バランスが適切に維持されます。

一方で、尿素のような老廃物や、体内で過剰になった電解質などは、あまり再吸収されずに原尿中に留まります。このように、必要な成分が再吸収され、不要な成分が濃縮される過程を経て、原尿は約1%程度の量にまで減少し、組成も大きく変化して最終的な「尿」となるのです。

つまり、原尿は腎臓が血液を浄化し、体内の環境を一定に保つ恒常性維持機能において、最初に生成される非常に重要な液体であり、その後の尿細管での選択的な再吸収プロセスを経て、はじめて体外に排出されるべき尿が完成されるわけです。原尿の生成とその後の処理は、体液バランス、血圧調節、そして老廃物排出といった生命維持に不可欠な機能の基盤となっています。

このように、原尿は単なる濾過液ではなく、体が必要とする成分を再利用し、不要な成分を捨てるための精密な仕組みが働く出発点となる液体なのです。

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