原田國男

原田國男（はらだ くにお）

原田國男は、1945年2月26日生まれの日本の裁判官です。刑事裁判を専門とし、東京高等裁判所部総括判事を最後に定年退官しました。量刑研究の第一人者として知られ、数々の刑事事件に携わってきました。

人物

原田國男は、刑事裁判における量刑研究の第一人者として、この分野で多くの論文を発表しています。法務省刑事局付検事として、刑法の全面改正にも従事しました。ジャーナリストの池添徳明は、「原田裁判長は希有の存在」と評し、原田氏のような裁判官が珍しいこと自体が日本の裁判所の異常さを示していると指摘しています。

原田氏の曾祖父は宮崎県知事などを務めた永峰弥吉であり、弥吉のいとこには川路聖謨がいます。

経歴

1967年4月 - 1969年: 司法修習（21期）
1972年: 法務省刑事局付検事
1978年: 福岡地方裁判所判事
1981年: 東京高等裁判所判事
1984年: 名古屋地方裁判所判事
1987年 - 1991年3月: 最高裁判所調査官
1991年4月 - 5月: 東京高等裁判所判事
1991年5月 - 1995年3月: 東京地方裁判所部総括判事
1995年4月 - 1998年3月: 東京地方裁判所八王子支部部総括判事
1998年4月 - 1999年6月: 東京高等裁判所判事
1999年6月 - 2000年1月: 水戸家庭裁判所所長
2000年1月 - 2001年9月: 水戸地方裁判所所長
2001年9月 - : 東京高等裁判所部総括判事
2010年2月: 定年退官
2010年4月: 第一東京弁護士会弁護士登録、田辺総合法律事務所パートナー、慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授
2015年11月：瑞宝重光章受章

主な担当事件

原田國男が担当した主な事件として、以下のものがあります。

西武新宿線痴漢事件: 東京高裁において、一審の有罪判決を覆し、被告人に逆転無罪判決を言い渡しました。この際、判決文で警察・検察のずさんな捜査を厳しく批判しました。判決文には、「警察官がずさんともいえる犯行再現などにより、強引なまでに被告人の弁解を封じて一顧だにしないという態度をとったため、被害者は次第に被告人が犯人だと確信するようになった」とあります。
芸能事務所社宅ドア損壊事件: 東京高裁において、女性タレントの器物損壊事件の一審有罪判決を覆し、逆転無罪判決を言い渡しました。原審では、ドア穴に付着した緑色の繊維が証拠とされましたが、控訴審で原田裁判官は、事件当日に警察署が撮影した紫色のジャケットを着用したタレントの写真を採用。証人の再尋問の結果、緑色の繊維が付着していたこと自体が不自然と判断され、検察側が繊維の証拠を撤回しました。この事件で、原田裁判官は原審の不自然さを指摘し、検察の立証を批判しました。
池袋通り魔殺人事件: 東京高裁において、一審の死刑判決を支持し、被告人の控訴を棄却しました。

これらの事件を通じて、原田氏は、刑事裁判における事実認定の重要性や、警察・検察の捜査のあり方について、鋭い問題提起を行いました。

著書

原田國男は、以下の書籍を執筆しています。

『量刑判断の実際〔第3版〕』（立花書房、2008年、初版2003年）
『裁判員裁判と量刑法』（成文堂、2011年）
『逆転無罪の事実認定』（勁草書房、2012年）
『裁判の非情と人情』（岩波新書、2017年） - 第65回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作

共編著

『刑事裁判の理論と実務 中山善房判事退官記念』(1998年)
「上訴審の量刑審査基準」（『裁判例コンメンタール刑法』1-3巻、2006年）
『大コンメンタール刑事訴訟法』全11巻 （2010-17年）

記念論文集

* 『新しい時代の刑事裁判 原田國男判事退官記念論文集』（判例タイムズ社、2010年）

原田國男は、裁判官として、また研究者として、日本の刑事司法に多大な貢献をしてきました。その業績は、今後も長く評価されるでしょう。

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