原田種夫

原田種夫：九州文学を彩った小説家、詩人

原田種夫（はらだ たねお）は、1901年（明治34年）に福岡県福岡市で生まれ、1989年（平成元年）に88歳で亡くなった小説家、詩人です。本名は種雄（たねお）といいます。彼は、九州の文学界において重要な役割を果たし、数々の文学作品を発表しました。

生涯と文学活動

原田は1921年（大正10年）に西南学院中学部を卒業後、法政大学予科英文科を中退しました。その後、文学活動に専念し、1928年（昭和3年）には山田牙城らとともに詩誌『瘋癲病院』を創刊しました。この活動を皮切りに、個人誌『銛』や詩誌『先発隊』、『九州詩壇』、『九州芸術』など、多くの文芸誌を次々と創刊し、九州の文学運動を牽引しました。また、1938年（昭和13年）には火野葦平、劉寒吉らと第二期『九州文学』を発刊し、九州の文学界に大きな影響を与えました。

原田の作品は、純文学から大衆小説まで多岐にわたりました。1939年（昭和14年）には『風塵』で芥川賞の候補となり、1940年（昭和15年）には『闘銭記』で九州文学賞（小説部門）を受賞しました。その後も、1943年（昭和18年）に『家系』、1953年（昭和28年）に『南蛮絵師』、1954年（昭和29年）に『竹槍騒動異聞』と、計4回直木賞の候補となりました。

1972年（昭和48年）には西日本文化賞、1976年（昭和51年）には福岡市文化賞を受賞し、その文学的功績が広く認められました。原田は、自身の創作活動だけでなく、後進の育成にも力を注ぎました。その情熱は、彼が創刊した多くの文芸誌を通して、次世代の文学者たちに受け継がれています。

多彩な著作

原田種夫は、小説、詩集だけでなく、評論や紀行文など、多岐にわたるジャンルの著作を残しました。主な著作として、『博多方言』（1956）、『名作のふるさと』（1956）、『西日本文壇史』（1958）、『南国のエロス』（1958）、『実説・火野葦平―九州文学とその周辺』（1961）、『九州の旅』（1961）、『人形と共に六十五年―小島与一伝』（1962）、『エロスの教養―南国風俗誌』（1966）、『原田種夫全詩集』（1967）、『九州の民話』（1969）、『さすらいの歌』（1972）、『記録九州文学〈創作篇〉「九州文学」小史』（1974）、『黎明期の人びと―西日本文壇前史』（1974）、『九州方言考―ことばの系譜』（1982）、『原田種夫全集5巻』（1983）などがあります。これらの作品を通して、原田の文学的才能と幅広い知識、そして故郷への深い愛情が伺えます。

晩年と文学碑

原田は晩年まで創作活動を続け、1989年（平成元年）8月15日に88歳で生涯を閉じました。福岡市博多区中洲には、彼の文学的功績を記念する文学碑が建立されており、その功績は今も語り継がれています。原田種夫は、九州の文学史にその名を深く刻んだ、不朽の作家と言えるでしょう。

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