厳家淦

厳家淦（げん かかん）

厳家淦（げん かかん、1905年10月23日 - 1993年12月24日）は、中華民国の政治家であり、第2代総統を務めた人物です。その生涯は、激動の時代における台湾の発展と深く関わっています。

生い立ちと初期の経歴

江蘇省蘇州に生まれた厳家淦は、上海の聖ヨハネ大学を卒業後、鉄道管理局に勤務しました。日中戦争中は福建省政府で道路や河川の改修に尽力し、戦時下の財政改善にも貢献しました。特に、農作物を現物で納税させる「田賦徴実」制度は、インフレから農民を守る画期的な政策でした。

台湾での活躍

終戦後、厳家淦は台湾に渡り、台湾省行政長官公署で要職を歴任しました。中でも、台湾省財政処長として実施した通貨改革は、彼の最大の功績として知られています。当時、旧台湾ドル（旧台幣）の価値が暴落する中、厳家淦は新台湾ドル（新台幣）を発行し、デノミネーションを実施することで、台湾経済をインフレから救いました。この功績から、彼は「新台幣の父」と呼ばれるようになりました。

総統への就任と退任

1975年、蔣介石総統の死去に伴い、厳家淦は副総統から総統に昇格しました。しかし、当時の台湾では、蔣介石の息子である蔣経国が行政院長兼中国国民党主席として実権を握っており、厳家淦は象徴的な存在でした。総統在任中、蔣経国が主導した大規模なインフラ整備計画「十大建設」が推進され、台湾経済は大きく発展しました。

1978年、厳家淦は総統を退任し、蔣経国にその座を譲りました。退任後は、中華文化復興推行委員会の会長などを務め、文化振興に貢献しました。

人物像と評価

厳家淦は、温厚篤実な人柄で知られていました。常に冷静沈着で、仕事には細心の注意を払い、他人に対しては親切でした。また、派閥争いを好まず、政治的な野心を持たない人物でした。そのため、多くの人々から信頼され、尊敬されていました。

彼は、数字に強く、経済政策の立案能力に長けていました。また、台湾の発展に尽力したテクノクラートとして高く評価されています。蔡英文総統も、厳家淦を「台湾の発展の基礎を築いた模範的な人物」と評しています。

エピソード

史上最も長く行政院長を務めた人物である（8年5か月半）。
音楽好きで、特にベートーヴェンの交響曲第9番を愛聴していた。
* 写真撮影が趣味で、庭園の風景などを16ミリ映画で撮影していた。

家族

厳家淦は、2度の結婚で5男4女を儲けました。子供たちは、各界で活躍しています。

まとめ

厳家淦は、台湾の経済発展に大きく貢献した政治家であり、清廉潔白な人柄で多くの人々に慕われた人物でした。彼の功績は、現代の台湾社会においても高く評価されています。

もう一度検索