友よ (岡林信康の曲)

「友よ」は、日本を代表するフォークシンガー、岡林信康によって作詞（鈴木孝雄との共作）および作曲された楽曲です。この歌は、彼のキャリア初期における重要な作品であり、1968年9月5日にリリースされたデビューシングル「山谷ブルース」のB面に初めて収録されました。その後、翌1969年に発売された彼のデビューアルバム『わたしを断罪せよ 岡林信康フォーク・アルバム第一集』にも収められています。シングルバージョンには、高石友也やフォーク・キャンパーズといった当時のフォークシーンを牽引するアーティストたちの演奏もクレジットされています。

岡林信康のオリジナル楽曲としては、「くそくらえ節」「がいこつの唄」に続いて3番目に生み出された「友よ」は、発表された当時の社会情勢と深く結びつきながら広まっていきました。特に1960年代末期、学生運動をはじめとする社会変革を求める動きが活発だった時期において、この楽曲は「社会変革を訴える歌」として多くの人々に受け止められました。集会やデモ行進といった運動の現場では、それまで主流だった「インターナショナル」に代わるかのように、テーマソングとして熱心に歌われるようになります。この熱狂的な支持を受け、岡林自身も「反体制の象徴」として、また関西フォークシーンを代表するスターとしての地位を確固たるものにしました。

この歌の中でも特に印象的なのは、繰り返される「夜明けは近い」というフレーズです。この言葉は、当時の閉塞感や絶望的な状況の中でも、必ずや訪れるであろう明るい未来への希望を示唆するものとして、強いメッセージ性を持ち、多くの若者を鼓舞しました。元学生運動家である白川勝彦は、後に「友よ」が学生運動に熱心だった世代にとって忘れられない一曲であることを語っています。

実際、1969年前半には、新宿駅西口地下広場で開催されたベトナムに平和を!市民連合（ベ平連）によるフォークゲリラ集会でも「友よ」は頻繁に歌われました。同年刊行された『ベ平連のうた－その発展の足跡－』にはこの曲の楽譜が掲載され、付属のレコードにはフォークゲリラたちの演奏が収められています。また、1969年8月9日から10日にかけて岐阜県で開催された第1回全日本フォークジャンボリーでは、フィナーレで岡林を含む参加者全員による「友よ」の大合唱が行われ、この歌が持つ求心力と時代の象徴としての性格を強く印象付けました。

担当ディレクターであった深井静史は、この歌があまりにも活動家たちの間で歌われたため、知人から「お前の名前が警視庁のブラックリストに載っている」と告げられたというエピソードを明かしています。それは、この歌が当局からも「陰の指導者」が関わる「反体制の象徴歌」として警戒されるほどの影響力を持っていたことを示しています。

しかし、岡林自身の創作当時の思いは少し異なります。「絶望的な暗さの中にいる今だからこそ、『夜明けは近い』と歌いたかった。夜明けが本当に近いわけではなく、今の暗闇の中で闘いの炎を燃やそうという気持ちだった」と彼は振り返っています。また、この曲の3番は元フォークキャンパーズのリーダーだった鈴木氏が加えたものであることも語っています。

さらに後年のインタビューで、岡林は「友よ」の根幹に賛美歌の影響があったことを明かしています。そして、この歌が彼の意図を超えて広まったことについても言及しており、「左翼運動のテーマソングになったかと思えば、自衛隊の駐屯地でも歌われていたらしい」と述べ、楽曲が一人歩きし、多様な場で受け止められた複雑な状況を語っています。

時代を超えて、「友よ」は大衆文化の中でも再び注目されることがあります。1992年に放送されたフジテレビのテレビドラマ『愛という名のもとに』では、この歌が効果的に使用され、改めて多くの人々にその存在を知らしめました。この再評価を受け、シングルとして再リリースする企画が持ち上がりましたが、岡林は「あの二曲（友よ、私たちの望むものは）は70年代の空気と切り離せない」「今さら自分が歌ってヒットしても意味がない」と述べ、これを断っています。また、2009年のJNN50周年記念スペシャルドラマ『父よ、あなたはえらかった〜1969年のオヤジと僕』では主題歌として使用されました。さらに、プロサッカーチームであるギラヴァンツ北九州のサポーターが、地域リーグ時代から2016年のJ2所属時まで、試合前のチャントとしてこの歌を用いていた時期もあります。

このように、「友よ」は発表された時代の社会状況を色濃く反映し、特定の運動の象徴として強烈なインパクトを残しましたが、同時に作り手の意図を超えて様々な場所で歌い継がれ、後世の作品でも使用されるなど、日本のフォークソング史において特別な位置を占める楽曲と言えるでしょう。

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