反射 (松本清張)

松本清張『反射』

概要

『反射』は、松本清張が1956年に発表した短編小説です。『小説新潮』1956年9月号に掲載され、同年10月には短編集『顔』の一編として講談社ロマン・ブックスから刊行されました。

この作品は、1959年と1961年にテレビドラマ化されており、その心理的な駆け引きが映像化されています。

あらすじ

物語の主人公は、安月給で生活に困窮している霜井正雄です。彼は、バーの女給である雨宮スミ子が、愛人の会社重役から大金を簡単にもらったことを知ります。その不合理さに憤慨した霜井は、結婚資金に困っていたこともあり、スミ子を殺害して金を奪う計画を立てます。

霜井は、自分が一度は容疑者になることを想定し、その上で有罪にならない方法を練ります。計画を実行し、スミ子を絞殺した後、予想通り容疑者として連行されます。彼は、事前に用意していた供述を繰り返しますが、捜査が進むにつれて、香原警部の鋭い洞察に追い詰められていきます。

香原は、霜井の供述が完璧すぎることに疑念を抱き、一対一で対峙し心理的な実験を試みます。最終的に、香原が何気なく言った一言に、霜井は思わぬ反射的な反応を示し、犯行が露呈することになります。

作品の特徴

この作品は、犯罪者の心理を深く掘り下げている点が特徴です。犯人が犯行を計画し、警察の捜査をどのようにかわそうとするのか、その心理的な動きが緻密に描かれています。

作者の松本清張自身も、この作品を短編にまとめることの難しさを語っています。また、文芸評論家などからは、江戸川乱歩の「心理試験」を意識した作品であるという指摘もされています。特に、犯人の動機を冒頭に置くスタイルや、その人間観など、多くの共通点が見られるとされています。

テレビドラマ

1959年版

1959年4月29日に毎日放送の「ミステリー劇場」枠で放送されました。

キャスト
北村和夫
小池朝雄
近藤準
スタッフ
脚色：茂木草介

1961年版

1961年5月8日と5月15日に、TBS系列の「ナショナル ゴールデン・アワー」枠で、「松本清張シリーズ・黒い断層」の一作として2回にわたり放送されました。

キャスト
高橋昌也
水嶋道太郎
露口茂
柳谷寛
森健二
南道郎
スタッフ
プロデューサー：逸見稔
制作：東京テレビ

関連事項

* ミュンスターベルク：作中に言及されるアメリカの心理学者。江戸川乱歩「心理試験」にも登場します。

まとめ

『反射』は、松本清張の卓越した心理描写が光る短編小説です。犯人の緻密な計画と、捜査官との心理戦が、読者を最後まで飽きさせません。また、テレビドラマ化されたことで、より多くの人にその魅力が伝わりました。

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