反論権

反論権とは

反論権（はんろんけん）は、新聞やテレビなどのマスメディアにおいて、報道によって不当な批判や中傷を受けた個人や団体が、その報道に対して自身の意見を表明する機会を求める権利です。これは、すなわちアクセス権という概念に基づく一つの形態とされています。

反論権の種類

反論権には、狭義の反論権と広義の反論権の二つの種類があります。狭義の反論権は、不法行為が成立することを前提にしていますが、広義の反論権はその成立を問わずに認められます。いずれの場合も、批判があった際には同一の紙面や放送時間、同じ分量での無料反論が保障されることが必要とされています。

各国における法制化の動向

フランス

フランスは、反論権の法制化において先駆的な役割を果たしました。1822年に公表された出版法によって、プレスにおける反論権が初めて導入され、1881年にはこの概念が制度として体系化されました。1972年には放送法にも反論権が採用され、現在に至っています。

ドイツ

ドイツでは、フランスの影響を受けて1831年にバーデン州の出版法で初めて反論権が制定され、その後1874年には帝国出版法として全国的に法制化されました。戦後の各州では出版法から放送法、さらにはメディア法へと進化を遂げ、武器対等の原則を掲げる特徴があります。

韓国

韓国はドイツ法を基にして1980年に言論基本法を導入し、ここに反論権が含まれています。さらに定期刊行物登録に関する法律や改正放送法などに反論権が組み込まれ、言論仲裁及び被害救済に関する法律へと統合されています。

英米法圏

アメリカやカナダ、英国、ニュージーランドなどの英米法の国々では、残念ながら反論権は法制化されていません。

日本

日本では、1909年に施行された新聞紙法の中に「正誤・弁矯権」という制度が存在しましたが、第二次世界大戦後のGHQによる指示でこの法律は1949年に廃止されました。そのため、反論権に相当する制度はその後設けられませんでした。具体的な判例では、サンケイ新聞事件において反論権が法令に基づかないとして認められなかった例があります。

日本における学説の動向

従来の意見

多くの憲法学者や一部の民法学者は、反論権に対して否定的な意見を持っています。彼らは、反論権が自由な議論に対する言論統制につながる懸念を示し、戦前の新聞紙法の復活を暗示するものであると指摘しています。

最近の意見

一方で、若手の憲法学者やメディア法研究者たちは、反論権の存在が言論の多様性を促し、司法救済よりも簡便であるという見解を示しています。さらに、一部の研究者は、インターネット上にも反論権を適用することを提唱しています。

結論

反論権は、報道の自由と表現の自由とのバランスを保つ重要な権利ですが、制度化に向けた議論は日本国内で活発に行われているものの、依然として法整備は進んでいないのが現状です。

もう一度検索