反軍演説

反軍演説とその背景

概要

反軍演説は、1940年2月2日に日本の帝国議会衆議院で行われた斎藤隆夫による演説である。この演説は、当時続いていた日中戦争に対する問題提起と、それに伴う政府の方針への根本的な疑問を提示したことで多くの注目を浴びた。この演説の結果、斎藤は衆議院議員を除名され、言論弾圧の一例としても記憶されている。

演説に至る経緯

斎藤は、1936年に行った「粛軍演説」において、軍部の政治的関与に対して批判を繰り広げ、当時の政局において注目を集めた。しかし、その後は警察や軍部からの監視や圧力がかかり、脅迫状などの攻撃にさらされることになった。さらに「国家総動員法案に関する質問演説」でも同様に強い反発を受け、法案は全会一致で成立してしまった。

1937年から始まった日中戦争が長期化する中、病床の斎藤の元には「沈黙を続けている理由は何か」という問い合わせの手紙が増加した。この声に応えるように斎藤は、再び演説を行う決意を固めた。1940年1月の新内閣成立を受けて、斎藤は演説の準備に入った。

演説の内容

反軍演説は、斎藤の意見として以下の5つの要点を含んでいた。
1. 近衛声明は事変処理の最善策であるのか否か。
2. 東亜新秩序の具体的内容は何であるか。
3. 世界戦争の歴史から見ると、東洋の平和によって世界の平和を得ることは可能か。
4. 支那新政権についての疑問。
5. 現内閣に対する責任の論述と警告。

演説中、場内は驚くほど静まり返りつつも、所々で拍手が起こる場面が目撃された。斎藤は、発言中に他の小会派からの野次もあったものの、その後の安定した議場の様子に安堵を覚えた。演説の結果、政府関係者からの反応は分かれ、特に陸軍の一部メンバーからは不満が露わにされたが、社会の反応は斎藤への感謝や支持に向けられた。

演説後の影響

演説直後、斎藤は陸軍や政治界から強い攻撃を受けることになる。議長である小山は、演説の中で特に批判的な部分を速記録から削除する処置をとり、これが後に問題となった。演説の公開後、内容が国内外に広まり、特に中華民国で大きく報道されることになった。

斎藤は、反軍演説の結果として、2月3日に離党勧告を受け、党内外からの圧力を受けつつも、最終的には除名処分に至る。3月7日、斎藤は衆議院から除名され、この結果として日本の政府や軍部が如何に言論を弾圧しようとしたかの象徴ともなった。

除名後の活動

除名後も斎藤は政治活動を続け、再度選挙に立候補して見事再当選を果たす。この結果は、彼が国民の支持を受けていたことの証明でもあった。斎藤はその再選に関して「国民の声を反映した結果」と語り、自己の信念を貫く重要性を強調した。

結論

反軍演説は、斎藤隆夫が持っていた政治的信念を顕在化させ、日本の言論の自由と政府の権力のあり方について考えさせる契機となった。この演説が、言論の重要性や議会制民主主義の価値を再確認させるきっかけとなり、後の日本政治においても重要な意味を持ち続けることになる。

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