軍部

軍部

軍部は、広義には国家が保有するすべての軍隊を指し、具体的には陸軍、海軍、空軍などを含みます。この用語は、文民政府との関係を議論する際によく使用されます。特に、軍部の政治介入やクーデターによって文民政府が崩壊する場合、または文民統制が求められる文脈で重要な役割を果たしてきました。このような動きは、特にアジアやラテンアメリカなどの権威主義体制において顕著です。これらの事例は「政軍関係（civil-military relations）」と呼ばれるテーマに位置づけられます。

日本における軍部の概要

日本において狭義の軍部は、戦前の旧日本軍、つまり旧日本陸軍および旧日本海軍の上部組織を指します。具体的には、陸軍省や海軍省、陸軍参謀本部、海軍軍令部などがこれに該当します。なお、空軍は日本に限らず多くの国で第二次世界大戦後に設立されたため、戦前の日本には存在しませんでした。

戦前期の日本において、軍部の制度的な基盤は、いくつかの重要な制度によって支えられていました。例えば、軍部が文民政府から独立していることを保障する「統帥大権」は、大日本帝国憲法第11条に基づくものでした。さらに、軍部大臣現役武官制や帷幄上奏権、また軍学校を通じて軍の幹部を養成する制度なども、軍部の独立性を強化する要因となりました。具体的な養成システムとしては、陸軍では陸軍幼年学校、陸軍士官学校、陸軍大学校が、海軍では海軍兵学校と海軍大学校が存在しました。

実際には、軍部がその存在感を示すようになったのは、三宅正樹の説明によると、陸海軍が文民政治家や官僚との独立性を高め、さらにはこれを圧倒する力を持つ政治勢力に成長した時期です。当初は文民政治勢力からの批判として「軍部」という表現が使われることが多かったと言われています。第二次世界大戦後、日本は戦闘能力を持つ自衛隊を文民統制の下に置くことで、過去の軍部による政治介入やクーデターの可能性は低くなったと考えられています。

日本以外の軍部

日本以外の国において「軍部」に相当する概念を特定するのは難しいですが、プロイセンの将校団などが近い存在かもしれません。ハンティントンによる政軍関係の初期研究では、近代的な将校団の特徴について以下の3点が挙げられています。まず、暴力の独占的管理における専門技術性、次に国家軍事安全保障における責任性、そして社会から区別された特殊職業集団としての団体性です。これらの特質は、他の研究者によって批判や修正を受けながらも、軍部の定義や実態を考察する際に重要な視点となっています。

参考文献

• - Huntington, Samuel P. (1964). The Soldier and the State: The Theory and Politics of Civil-Military Relations. Cambridge University Press.
• - 三宅正樹. 「日本の政軍関係の特質と病理」 『昭和期の軍部と政治1 軍部支配の開幕』第一法規, 1983.
• - 廣瀬克哉. 「軍事専門職業論の論理構造とその限界 - ハンティントンの「客体的文民統制」批判」『思想』1983年7月, 岩波書店.
• - イ・ヒョンチョル. 軍部の昭和史（上）合法的・間接支配への道 NHKブックス, 1987.

関連項目

• - 軍事政権
• - 軍閥

もう一度検索