取調室 (テレビドラマ)

テレビドラマ『取調室』

概要

『取調室』（とりしらべしつ）は、1994年から2003年にかけて、日本テレビ系列の二時間ドラマ枠「火曜サスペンス劇場」で放送された人気刑事ドラマシリーズです。ミステリー作家・笹沢左保の小説を原作とし、故・いかりや長介が主演を務めました。全19作品が制作・放送されています。

多くの刑事ドラマや小説が事件発生から犯人逮捕に至る過程を追うスタイルを取るのに対し、本シリーズはタイトル通り、被疑者逮捕後の取調べの場面に特化している点が最大の特徴です。物語は、視聴者には犯人が誰であるかが事前に明かされている倒叙ミステリー形式で展開します。

主人公は、主演のいかりや長介が演じる佐賀県警察捜査一課所属のベテラン刑事、水木正一郎警部補です。彼は被疑者から巧みに供述を引き出す能力に優れ、「落としの達人」、通称「落としの水さん」として知られています。ドラマでは、水木警部補が、逮捕された容疑者と一対一で向き合い、心理的な駆け引きや緻密な尋問を通して、事件の真相や動機を解き明かし、最終的に自白へと追い込んでいく過程、そして送検に至るまでの流れが中心に描かれます。佐賀県を舞台にした地域色も作品に深みを与えています。

いかりや長介とシリーズの歴史

『取調室』シリーズは、主演のいかりや長介にとって、俳優としてのキャリアにおいて特に重要な位置を占める作品であり、自身の「ライフワーク」として語られることもありました。約10年間にわたる長期シリーズとして継続し、いかりや長介は温厚さと厳しさを併せ持つ水木警部補というキャラクターを確立しました。

シリーズの制作は、初期（第1作から第15作）を宝映企画（現在の宝映テレビプロダクション）が、後期（第16作から第19作）を日本テレビエンタープライズがそれぞれ担当しました。

残念ながら、主演のいかりや長介が2004年3月に死去したことにより、シリーズの継続は困難となりました。制作サイドでは後任を立ててのシリーズ続行も検討されたものの、最終的にはいかりや長介の存在が不可欠であるとの判断から、第19作をもってシリーズは完結することとなりました。

シリーズ終了後も根強い人気があり、2012年と2013年にはBS日テレで全作品の再放送が行われました。

主な登場人物

本シリーズに登場する主なキャラクターは以下の通りです。

水木正一郎（演：いかりや長介）: 佐賀県警捜査一課の警部補で主人公。被疑者の自白を引き出す「落としの達人」。
佐賀県警捜査一課: 水木警部補と共に事件捜査にあたる同僚たち。水木の相棒役はシリーズ途中で西川忠志、宮川一朗太、斉藤陽一郎へと交代しています。その他、管理官、捜査一課長、刑事など、多くのキャラクターが登場し、シリーズの進行とともに配役の変更が見られました。
各警察署の関係者: 事件が発生した地域の警察署の署長や刑事たちが登場します。武雄、有田、鳥栖、多久、呼子など、佐賀県内の様々な警察署が舞台となりました。
水木家の家族: 第13作からは、水木の妻・加代子（演：藤田弓子）と娘・直子（演：有森也実）が登場。刑事としての顔とは異なる、水木の家庭での姿が描かれ、物語に奥行きを与えました。
ゲスト出演者: 各話で事件の容疑者や関係者として登場します。彼らと水木警部補の取調べでのやりとりがドラマの核となるため、各界の実力派俳優たちがゲストとして出演し、見応えのある芝居を繰り広げました。

スタッフ

原作: 笹沢左保
脚本: 各話担当
音楽: 大谷和夫
演出: 各話担当
撮影: 林淳一郎、東原三郎 ほか
プロデューサー: 田辺昌一、伊藤猛、田中芳樹 ほか
制作: 宝映企画（初期）、日本テレビエンタープライズ（後期）

佐賀県観光連盟や県内各地の自治体（嬉野町、唐津市、呼子町、有田町、太良町、鳥栖市、多久市など）がロケ協力しており、作品のリアリティと魅力を高めています。

関連作品

同じ笹沢左保の原作による刑事ドラマとして、『女取調官』シリーズがあります。この作品は2011年からTBS系列で放送され、賀来千香子が主演を務めました。こちらも佐賀県警捜査一課が舞台であり、主人公の姓が「水木」であるなど共通点が見られますが、設定や登場人物に直接的な繋がりがあるかは明確にされていません。

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