口入

口入（くにゅう）とは

口入とは、他者の間に入って仲介や斡旋、あるいは干渉を行う行為を指す言葉です。日本では古代から近代に至るまで、広く用いられてきた言葉ですが、特に中世においては、特殊な法律用語としても用いられました。

口入の歴史

口入の歴史は古く、平安時代後期には、伊勢神宮の神官の中に、東国の在地領主に対して所領の寄進を働きかけ、その報酬として口入料を得る者がいました。こうした神官は「口入神主」と呼ばれていました。

鎌倉時代に入ると、鎌倉幕府が御家人を荘園の所職に推挙する行為を「関東御口入」と称するようになりました。さらに、朝廷の官位に対する御家人の推挙も口入と呼ばれるようになります。

また、訴訟においては、第三者が訴訟当事者の一方に加担する行為も口入と呼ばれました。本来、訴訟ごとに第三者が間に入って平和的な解決を図ることがありましたが、中世に入ると、当事者の縁者や繋がりを持つ権門が口入を通じて訴訟に介入するようになりました。この際、官途推挙に用いられていた挙状が、口入の申入書として権門間でやり取りされるようになりました。

特に、この時代には親戚縁者が、自身と関係のある訴訟当事者に口入することは正当な行為であるという観念が強く、権力者による口入は訴訟の結果にも大きな影響を与えました。

口入への対策

こうした口入の横行に対し、荘園領主（本所）は、本所法や内部の誓約によって口入を制限・禁止する動きがありました。鎌倉幕府や室町幕府も、たびたび口入の禁止令を出しましたが、その効果は限定的でした。また、権利者である本所の挙状がない寺社・荘園の訴訟を取り上げないという規定も設けられましたが、これも十分な効果は得られませんでした。

口入の現代的な意味合い

現代では、「口入」という言葉は、日常的にはあまり使われなくなりましたが、他者の間に立って仲介や斡旋、あるいは干渉を行う行為を指す言葉として、その意味は残っています。

関連事項

口入屋（手配師）： 人材の仲介や斡旋を行う職業ですが、読み方は「くにゅう」ではなく「くちいれ」です。

参考文献

山本博也「口入」『国史大辞典 4』（吉川弘文館 1984年） ISBN 978-4-642-00504-3
山本博也「口入」『日本史大事典 2』（平凡社 1993年） ISBN 978-4-582-13105-5
上杉和彦「口入」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年） ISBN 978-4-09-523001-6
* 佐藤雄基「院政期の挙状と権門裁判－権門の口入と文書の流れ」『日本中世初期の文書と訴訟』（山川出版社、2012年） ISBN 978-4-634-52348-7（原論文:2008年）

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